「ものづくりの精神を」 元留学生が創設の ダルマ・プルサダ大 四半世紀迎え オロアン新学長
ダルマ・プルサダ大学の新学長に、二〇一五年までの任期で実業界出身のオロアン・シアハアンさん(七〇)が就任した。「インドネシアと日本の懸け橋に」と、元日本留学生たちが資金や知恵を持ち寄り、一九八六年に同大学を創設してから四半世紀。オロアンさんは「キャンパス内での5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)運動などを通じ、ものづくりの精神を持ち込み、国内でも有数の優秀な学生が集まる大学を目指したい」と意気込んだ。
半世紀前にさかのぼる日本での留学中に「一つの任務を遂行する際の真剣さ」を学んだというオロアンさん。近年の日本では「そのような伝統が色あせつつある」と懸念もするが、一つの製品の生産システムに込められた規律や英知、忠誠心、職人魂などを総合的に捉えた「ものづくり」の文化や精神をカリキュラムの中にも盛り込み、学生たちに責任感や規律などを学んでほしいと願う。
「大事なのは大学が設立されたときの理念。名声やお金ではなく、われわれを日本に送り出してくれたインドネシアや受け入れてくれた日本への感謝の気持ちを込めるとともに、両国の懸け橋となるだけでなく、両国の有効を推進する乗り物になるということだ」と力を込める。
大学の評判を一層高めるためには、優秀な人材を輩出することで企業などに対するイメージを向上させるのと並行して、より多くの入学希望者を引きつけるための大学の魅力づくりを進めていく必要がある。
オロアンさんは、具体策として、インドネシア語と英語、日本語を中心としたトリリンガルや起業意識の高い人材の育成に向けた教材や施設の整備、卒業後の就職を見据えた企業との連携強化などを挙げる。
企業経営の経験が長いことから、大学組織の業績評価にバランスト・スコアカードを活用し、「卒業生満足度」という概念を導入することも考えている。
「日本の大学やインドネシアで事業展開する日系企業や機関との協力もこれまで以上に進めていきたい。企業に必要な人材、求められる能力はどのようなものかも知りたい」と述べ、経済面だけでなく、さまざまな分野でインドネシアの日本人コミュニティーのアドバイスをもらいたいと呼び掛けている。
◇オロアン・シアハアン氏
1941年3月30日生まれ。北スマトラ出身。60年3月に戦後賠償留学生の第1期生として日本に渡り、61―65年に京都大学、65―67年に同大大学院で金属工学(冶金)を学び、修士号を取得。工業省勤務を経て、70年に国営資源開発大手のアネカ・タンバン社入社。
89―94年に同社で取締役を務め、退任後の95年に産業プラントエンジニアリングのチュマラ・シコ・エンジニアリング・インドネシア社を創設。現在も同社社長を務める。
85―88年には米ボストン大学で経済学を学び(博士号前期課程)、2000年にインドネシア大学で経済学の博士号を取得。2004―10年にインドネシア商工会議所(カディン)多国間経済協力・国際貿易委員会委員長を務めた。