支店介さず金融取引 5行が試験運用推進 地方のアクセス拡大図る
金融機関へのアクセスが限定的な地域を中心に、国営銀行などが、支店を介さずに代理店を通じて金融取引ができる「ブランチレスバンキング」の普及に乗り出した。携帯電話を活用し、金融機関の店舗やATM(現金自動預払機)のない地域でも、容易に取引ができるようにする取り組みだ。
金融機関にアクセスできる市民の拡大を目指す中銀が旗振り役となり、5月から11月まで国営マンディリ銀、国営バンク・ラクヤット・インドネシア(BRI)、国家年金貯蓄銀行(BTPN)、CIMBニアガ銀行、シナール・ハラパン銀行の5行が、北スマトラ、西ジャワ、バリ、東カリマンタン、南スラウェシなど8州で試験運用する。通信会社の国営テルコムセル、インドサット、XLアクシアタの3社と協力し、電子マネーの普及も図る。
商店やガソリンスタンド、携帯電話関連の小売店などを想定した金融サービス仲介ユニット(UPLK)と呼ばれる代理店が取引を代行。利用者は携帯電話を通じ、取引を指示し、UPLKでお金を振り込んだり、引き出したりすることができるようにする。
地元メディアによると、インドネシアの銀行口座保有比率は人口の20%弱で、タイの78%、マレーシアの67%、中国の64%などと比べて低率にとどまっているのが現状。また、世銀の統計では、インドネシアで支店を開設するのに必要な費用は25万ドル、ATM1台で1万ドルかかるのに対し、ブランチレスバンキングの場合、1代理店につき400ドルで済む。
そのため、これまで採算が取れず、進出していなかった地域への金融サービス拡大を図ることも可能になる。
マンディリ銀で小口金融を担当するヘリー・グナディ取締役は地元メディアに対し、「1年間で500万人の顧客獲得を目指す」と明らかにし、60カ所程度の代理店を増やすために、郵便局などとの提携を進めていく方針を表明。BRIは、1万2千の代理店育成を目標にしている。
一方、地方の市民の金融取引に対する理解の向上や代理店の育成が目下の課題。中銀はマネーロンダリングなど不正を避けるため、代理店の審査基準の策定などブランチレスバンキングの本格運用に向けた規則の制定を急いでいる。