地域おこしで復興協力 東松島とアチェ 循環型社会実現へ
東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県東松島市の住民や地元企業の従業員が、2004年のスマトラ沖地震・津波で被災したアチェ州バンダアチェ市に赴き、特産品を生かしたコミュニティービジネスや災害に強い町づくりなどで、ノウハウを共有する試みが、年内にも始動する。復興にあたり、よりよい地域社会を作ろうとする取り組みの「輸出」は、住民が主体となった新たな復興協力のあり方を提示しそうだ。
東松島の復興と都市づくりを進める一般社団法人「東松島みらいとし機構(HOPE)」が国際協力機構(JICA)の「草の根技術協力事業(地域経済活性化特別枠)」に事業提案し、このほど実施が内定した。今後、市内の住民や企業に協力を募る。期間は3年程度の予定。
想定しているのは、例えば、特産のコーヒーを住民グループが商品化するなど、農産品を生かした地域活性化。アチェ側は水産関係のコミュニティービジネスの発展も期待しているため、漁業関係者との連携も検討するほか、廃棄物処理分野などで協力することも視野に入れている。
■循環型社会の実現へ
プロジェクトでは単に産業を起こすだけでなく、持続的な発展を目指すため、地域内の資源や人材を活用して問題を解決する「循環型社会」を推進することを重視する。
東松島は、通常の体制なら100年かかるとされていた震災がれき処理で、既存施設の活用や被災者を雇用するなどして、ほぼ全量の処理を終えた。地域内資源を使ったバイオマス発電を軸にエネルギー自給を目指すなど、先端的な取り組みが進む。
一方のアチェでも伝統農法が継承され、住民同士のつながりも強いなど、地域づくりの基盤がある。バンダアチェ市のバハギア都市計画局長は「東松島住民の経験は大いに参考になる」と意欲を示している。
■町おこしの意義確認
少子高齢化が進み、地方と都会の格差が広がる日本では、全国で特産品や立地環境を売りにした地域おこしに試行錯誤が続いている。アチェでの活動は、日本側住民にとっても町づくりの意義を再認識する機会にもなりそうだ。
05〜08年にアチェで復興支援に携わった、JICA東北支部の永見光三震災復興担当は「町づくりのあり方に答えはなく、日本でももがきながらの努力が続いている。アチェとの協力は、『自分たちのやっていることが間違っていない』と元気付けることにつながる」と事業の意義を説明。「目先の復興にとらわれない連携のリーディングプロジェクトとなり、100年先の子どもたちが東松島に住んで良かったと思えるようなプロジェクトになれば嬉しい」と話している。(道下健弘)