シェールガスを開発 商業化は依然不透明 エネ鉱省が意欲
世界的にシェールガス開発が進む中、エネルギー源の多様化を目指すインドネシアも開発に本腰を入れ始めた。エネルギー鉱物資源省はこのほど、シェールガス2鉱区の年内入札を目指すと発表。世界のエネルギー事情を大きく変える可能性がある新資源の市場参入に意欲を見せている。だが、高い生産コストなどの課題が山積し、商業化の実現は依然不透明だ。
入札対象になる可能性がある鉱区は、シェールガス埋蔵量が多いとされる北スマトラ州のキサラン鉱区と南カリマンタン州の西タンジュン鉱区。2鉱区の入札に向け、3カ月の共同研究調査の結果を基に、最終判断を下す。2鉱区は直接入札の方式で実施されるという。
同省によると、インドネシアのシェールガスの推定埋蔵量は574兆立方フィート。スマトラ島地域に233兆立方フィート、カリマンタン島地域に194兆立方フィート、パプア島地域には90兆立方フィートの埋蔵量があると予測する。
メタンガスの453兆立方フィート、天然ガスの153兆立方フィートを大きく上回り、石油や石炭に代わる次世代エネルギーとして期待が高まる。
5月には国営石油・ガスのプルタミナが、国内初のシェールガス開発として、北スマトラ州のスンバグ鉱区の契約を受注した。20年までに78億ドルを投じ、生産体制を整備する予定だ。
エディ・ヘルマントロ石油・ガス総局長は、年内にプルタミナや石油会社などと生産分与契約(PSC)8件を締結する方針を明らかにした。15年までにPSC30件の締結を目指しており、商業化の実現に向け投資を呼び込みたい考えだ。
■商業化に課題山積
一方、商業化への道はまだ遠いとの見方が強い。国際石油開発帝石(INPEX)の菅谷俊一郎インドネシア総代表(本社取締役)は「採掘技術や輸送インフラなどが整備されておらず、採算が取れないだろう。ほかの外資エネルギー企業のインドネシアへの関心は薄い」と指摘した。
高い生産コストやインフラの欠如が課題となっており、英字紙ジャカルタ・ポストによると、インドネシアのガス井1本に要するコストは800万ドル。また、全国の消費地をつなぐパイプライン網も未整備な上、国内の供給体制も整っておらず、インフラの構築に時間がかかるとみられる。
■対日輸出は非現実的
日本では、11年の東京電力福島第1原発事故以降、天然ガスの輸入が急増。日本政府はこのほど、カナダ政府と19年からのシェールガスの輸入開始で合意した。17年には米国からも輸入する予定で、調達先の多角化を図っている。
インドネシアから日本へのシェールガス輸出の可能性について、日系の資源業界関係者は「まだ出るかどうかも分からないのが現状。現在の天然ガス市場は買い手市場で、インドネシア政府が制度や資源ナショナリズム的な態度を改善しない限り、輸出は厳しいだろう」との見解を示した。(小塩航大)
シェールガス
地中深くの頁岩(けつがん)層から採取できる天然ガス。新たな採掘技術「水圧破砕法」が開発されたことで、北米を中心に2010年、生産量が飛躍的に増加。「シェールガス革命」で、安価なガス供給が実現し、世界のエネルギー構造が替わるとも言われる。