遠隔都市で国際セミナー 日本語教育学会とスディルマン大学 急増する学習者に対処を 中部ジャワ州プルウォクルト
インドネシア全国各地の大学の日本語教師の組織である日本語教育学会(ASPBJI)は二十八、二十九日、中部ジャワ州の遠隔都市プルウォクルト郊外のバトゥラデンへ日本から日本語教育専門家を招へいし、国際セミナー「インドネシアの中等及び高等教育における日本語学習ストラテジー」を開催した。
基調講演は、日本語教師養成の先駆者の一人、南山大学の伴紀子教授と、早大大学院日本語教育研究科の宮崎里司教授、招待講演はセミナーを後援した国際交流基金の尾崎裕子氏が務めた。
質疑応答では、ジャカルタやメダン、マナド、バリなど各地から集まった日本語教師百二十人が、効果的な言語学習ストラテジーの実践について、日ごろの試行錯誤を交えて質問。研究発表では、インターネットや電子メールで使われる日本語などをテーマにしたものもあった。
国際交流基金から国立スマラン大学に派遣されている日本語教師育成専門家の成田高広氏によると、中部ジャワ州で学士課程(S1)の日本語学科のある大学は州都スマランに三校あるのみで、ソロなどの中都市にもまだない。近隣の学園都市ジョクジャカルタ以外では未開発のままだ。
日本語教育学会の会員が集うセミナーは毎年開かれるが、今年は同学会のアグス・スヘルマン・スルヤディムリヤ会長の意向で、学士課程が設立されたばかりのプルウォクルトの国立スディルマン大学を激励する意味も込め、同大と共催したという。
同大のユシダ・ルシアナ日本語学科長は「一期生で四十七人も集まった外国語の学科は日本語が初めて」と話す。プルウォクルトは空港もない地方都市だが、サブカルチャーを通じて日本語に関心を持つ若者が急増。学生たちはフェイスブックに学科のアカウントを作成し、アニメの主人公などから取った日本人の名前を名乗るなどして情報交換しているという。
看護師・介護士候補の日本語教育研究などにも取り組んでいる宮崎教授は、高校の第二言語の一つに日本語が選ばれ、日本語学習者が七十万人と世界三位、非漢字圏で一位になったインドネシアについて「研究テーマになり得る非常に興味深い状況が生まれている」と語る。
しかし「学習者が必ずしも親日家になるとは言えない。日本語教師の質向上など、早急に対処すべき課題も多い」と警告。日本語学習と技術者養成を組み合わせるなど、言語教育と政策を同時に考えることができるインドネシア人の指導者育成も必要だと指摘した。