ドル調達枠倍増へ 12月の合意目指す 中銀、日銀から
インドネシア中銀と日銀は、二国間為替スワップ協定(BSA)の最大調達額を現在の120億ドルから倍増させる方向で事務レベルの協議を進めていることが13日、両国の交渉筋への取材で分かった。12月に東京で開かれる日・東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会合での合意を目指す。ルピアが対ドルで下落し、金融市場の信頼が揺らぐ中、中銀は調達可能な外貨を上積みすることで、為替市場への介入余力に対する投資家の懸念を払拭する狙いがある。
金融危機を回避するために短期的な外貨資金を融通する多国間ネットワークのチェンマイ・イニシアティブ(CMI)全体の資金規模は1200億ドルで、インドネシアへの調達額の割当は最大119億ドル。
BSAは各国の中央銀行が相互に結ぶ協定で、国際通貨基金(IMF)の承認を得ないと最大調達額の20%しか引き出せないCMIよりも、調達量や効率性などの面で融通が効く。
インドネシアにとって、最大調達先である日銀は、調達枠の倍増により一国のBSAでCMIの枠を大幅に上回ることになる。240億ドルは輸入ドル決済を約1.3カ月まかなえる額で、外貨準備高の安定化を通じ、市場の信頼回復を図る。
中銀幹部や日本側交渉筋によると、5月ごろから調達可能額の上乗せについて協議。240億ドルに引き上げる方向でまとまったという。今後、発効日など詳細を詰める。
中銀の外貨準備高は米国の量的緩和縮小の観測が強まって以来、ルピア安に対処するためのドル売りルピア買い介入で減少。6月に2年4カ月ぶりに千億ドルを割り込み、8月末時点では年初から14.5%減の930億ドルとなった。
中銀の外貨調達枠の上積みは、日本にとっても、インドネシア経済の安定を側面支援することで、現地の日系企業に安心感を与える意味がある。
インドネシア政府・中銀は、日イBSA以外でも外貨調達の交渉を進めている。今月ロシアで開かれた20カ国・地域(G20)財務省・中央銀行総裁会議で、中国など2カ国とのBSAで概ね合意。世界銀行などからの財政支援枠50億ドルのほか、2カ国で130億ドル規模の調達枠確保を見込んでいる。
中国との間では、来月初旬の習近平主席のインドネシア来訪に合わせ、正式に調印するとの観測が強まっている。(赤井俊文)
■ チェンマイ・イニシアティブ 1997、98年のアジア通貨危機を受け、2000年5月にタイで開かれた第2回ASEAN+3財務大臣会議で合意された、アジア地域の金融セーフティーネット。外貨準備を使って、通貨交換の形で短期的な外貨資金を融通する。調達枠上限の20%を超え調達する場合、国際通貨基金(IMF)の承認が必要になり、緊縮財政など介入を許すことになるため、最後の手段とされる。