18カ国が対テロ合同演習 機密分野で異例の多国間連携 米国関与の表れか
ASEAN(東南アジア諸国連合)10カ国に日本や米国、中国など8カ国を加えた拡大ASEAN国防相会議の枠組みの下で、インドネシアと米国が共同議長を務めるテロ対策専門家会合の合同演習が9日、西ジャワ州スントゥールの演習場で始まった。18カ国の約870人が参加し、13日まで実動・机上演習を実施する。特殊部隊を用いる対テロ分野での多国間交流は珍しく、地域の防衛当局間の信頼醸成につながると期待されている。防衛省・自衛隊からは4人がオブザーバー参加する。
訓練は占拠された建物を制圧するなどの実動演習や、作戦を立案する机上演習を通じて技術や経験を共有し、それぞれの能力強化や今後の連携につなげるのが目的。国軍のムルドコ司令官は開会式のあいさつで「各国の視点や経験の共有は地域全体にとって重要で、防衛協力の強化につながるだろう」と強調した。
参加国の国防関係者はテロ対策について「機密性の高い分野で、手の内を明かさないのが基本。他国と連携する場合も信頼できる二国間で行うのがほとんどで、多国間での実施は珍しい」と評価した。
対テロ分野で米イが連携した背景には、アジアでの存在感を強めようとする米国が、ASEANの大国であるインドネシアと強い関係を維持する姿勢を示したとの見方もある。
もともと特殊部隊を含む軍事交流を続けていた米国だが、東ティモール騒乱での人権侵害を理由に軍事支援を停止。10年に武器禁輸措置を全面解除したものの、特殊部隊の交流は途絶えたままだった。ところが11年に、中国とインドネシア両国の特殊部隊が西ジャワ州バンドンで合同演習を初めて実施した。今回の演習参加者からは、中イの接近に刺激された米国が、多国間演習を機に特殊部隊間の交流再開を含めたさらなる関係強化に乗り出すのではないか、との予想も聞かれた。
拡大ASEAN国防相会議は地域の安全保障・防衛協力を発展させる目的で2010年に発足。テロ対策や人道支援・災害対策、海上治安維持、平和維持活動、防衛医学の5分野で専門家会合を設置している。第1回国防相会議以降の成果として今年、各分野の実動演習を実施する。6月にはブルネイで人道支援・軍事医学の合同演習を行った。
先月下旬にあった第2回国防相会合では、国防相会議の開催頻度を3年から2年に短縮することや、専門家会合に新たに地雷処理分野を設けることなどを決めた。(道下健弘、写真も)