前月比微増も不安残る 市場はルピア安進行注視 製造業「1万3千ルピア限界」 8月の外貨準備高

 中銀は6日、8月末時点での外貨準備高が前月末の927億ドルから微増の930億ドルになったと発表した。4カ月ぶりの増加だが、8月はレバラン(断食月明け大祭)で金融市場の実際の取引日が少なかったことや中銀がルピア安を容認する姿勢を示したことが主因とみられ、一時的との見方が強い。一層のルピア安は実態経済に大きな影響を与えるとの懸念が上がる中、ルピアを買い支えるために介入を強めると外貨準備高が減少するという構造は変わらず、中銀はルピア防衛か外貨準備高維持の二者択一に頭を悩ませることになりそうだ。
      市場では減少観測が大勢を占めただけに、外準増加はルピアにとって好材料。ただ、金融市場では「悪い材料ではないが、力強さはない」とする見方が大勢だ。今月17、18の両日に開かれる米国の連邦公開市場委員会(FOMC)で「少なくとも金融緩和縮小開始の時期は提示される」(市場関係者)との見方が強まる中、注視が必要な展開が続いている。インドネシア時間の6日夜に発表された8月の米国雇用統計が事前予想を若干下回り、ドル買いを強める要因とならなかったため、ルピア売りに追い打ちをかける事態は回避された。
 中銀のディフィ・ジョハンシャ広報部長は「930億ドルは5.2カ月分の輸入をまかなえる量だ」と市場の懸念払拭を図っている。中銀は「ルピア防衛の第二の手段」として、先月末の臨時金融政策会合の後に延長を発表した日銀との二国間通貨スワップ協定が先月31日に発効したことも明らかにした。
  ■経営状況の悪化も
 銀行間の実勢取引レートで1万2000ルピア台を割り込むとの観測が強まる中、国内の製造業では、自動車部品メーカーなどを中心に1ドル1万3000ルピアを「コスト増の限界」と認識する企業が増えている。
 大手自動車メーカー幹部は「(現地調達率が高い)完成車メーカーは、販売収入も部品の購入費用もほとんどルピア決済のため、国内だけでみれば影響は軽微」と説明。一方、現地調達率が比較的低い部品メーカーは、原料輸入のドル決済などルピア安がコストに直結するため、「競合他社が多く、価格転嫁が難しいため、ルピア安が進行するたびに収支が厳しくなる。ルピア安が続けば、在庫がなくなる年末にかけて影響が出始め、経営環境は悪化する」と話した。
■「通貨危機再来」懸念
 シンガポールのDBS銀行は5日、現状を「1997年、98年の通貨危機の再来」と評するレポートを発表。最近の資本流出と通貨安は、アジア地域が「完全に」通貨危機に陥る兆候を示しているとした。特にインドネシアとインドは対外収支が悪化しているため、早急な救済策を打ち出す必要性を指摘している。
 このレポートについて、市場では「まだ通貨の下落幅は当時には比べ物にならないため、『危機の再来』とまでは言えないが、有力銀行のレポートの影響は無視できない」(別の市場関係者)との見方が上がっている。(赤井俊文)

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