「賃上げは20%まで」 三者協議で提示 経営者協会のソフヤン会長
経営者協会(アピンド)のソフヤン・ワナンディ会長は3日、じゃかるた新聞に対し、来年の最低賃金の最大引き上げ幅として資本集約型産業は最大20%、労働集約型産業は同15%を、地方自治体と労働組合との三者協議で提示する意向を明らかにした。11月末までの合意を目指して協議を進める。労働組合側が要求する50〜68%の引き上げ幅とは大きな隔たりがあり、交渉は難航するとの観測が強まっている。
ソフヤン会長は、賃上げの影響を受けやすい労働集約型産業について、「ベトナム、カンボジア、中国との激しい競争の中で、最低賃金を過度に引き上げることは、企業の資金繰りを悪化させ、国内経済の減速と大量解雇につながる」と警戒感を示した。
インドネシアの労働者の6割が非正規雇用であることも踏まえ、「正社員の人件費で企業がコストアップすれば、法律で保護されていない非正規雇用の従業員も失業する」と指摘した。
昨年の労働組合との交渉については、「労働組合側の要求に屈する形で4割程度引き上げることになった」と振り返り、今年は「政府も大幅な引き上げを望まない姿勢を示しており、昨年のような上げ幅にはならない」との観測を示した。
ソフヤン会長が昨年批判した組合側による経営者の監禁や脅迫といった違法な活動については「仮に違法行為があったとしても、今年は警察が厳しく取り締まる方針を示しており、昨年のような大きな影響は出ない」と予測した。
前年比50%の最低賃金増を要求している金属労連(FSPMI)のイクバル・サイド会長については、西ジャワ州ブカシ周辺の小さな労働組合で影響力はそれほど大きくないと認識しており、「グリンドラ党とのつながりなどから政治的に動いているという印象しか持っていない」と主張。日系企業経営者に対しては「彼の動向を気にしすぎず、主要労組とは順調に交渉が進んでいるという本質を見誤らないでほしい」と呼び掛けた。
政府に対しては、先月緊急経済対策として打ち出した、労働集約型産業への優遇税制について「20〜25%の法人税減免だけでは不十分」とし、国内産業保護のため、さらなる優遇措置を求めていく方針も明らかにした。
今年の経済成長目標については「世界経済の減速から5.5%程度」と予測。来年の大統領選挙に関して、有力候補のグリンドラ党のプラボウォ・スビアント氏は「公約では保護主義的な政策を掲げているが、当選した場合、その通りに政策を実行するかは分からない」とした。ジャカルタ特別州のジョコウィ知事は「現在は人気が高いが来年まで続くかどうかは注視が必要」と評した。(赤井俊文、写真も)