タタ自動車が参入 「世界一安い車」投入へ 来年に現地組立

 世界最安値の自動車を製造・販売するインドのタタ自動車がインドネシア市場に参入する。日本メーカーがシェア9割以上を占め、昨年は東南アジア最大になった自動車市場。欧米、韓国、中国勢も攻勢を強める中、低価格を武器に、「タタ・ブランド」の確立を目指す。(田村慎也、写真も)

 タタ自動車は11日、中央ジャカルタのUOBプラザで記者会見し、インドネシア参入を正式に発表した。現地法人「タタ・モーター・インドネシア社」を昨年10月に設立、製造許可もすでに取得した。インドネシアを東南アジアの製造拠点と位置付ける。来年に現地組立を開始し、当面は国内向けに乗用車、商用車両方を販売する方針。生産規模、投資額については「時期尚早」として言及を避けた。
 現地法人のビスワデフ・スングプタ社長は、生産車種について、「セグメントの規模が拡大しているシティカーや、ピックアップ」とだけ述べ、具体的な車種は明かさなかったが、09年3月に10万ルピー(約19万円、当時のレート)からインドで販売開始した排気量600ccの小型車「ナノ」を投入するとみられる。同社長は先に、ジャカルタポスト紙に対し、販売価格について、1億ルピア(約83万円)を切るとだけ明らかにしている。
 日本メーカーが9割以上のシェアを占めていることについては、「日本車とは直接競争せず、新たなセグメントを作り出していく」との戦略を示した。
 インドネシアで2年以上市場調査した上で、参入を決めた。東南アジアではタイに次ぐ2カ国目の製造拠点となる。進出の理由として、自動車販売のCAGR(年平均成長率)が07年からの5年で16%だったことや、昨年にはタイを超え東南アジア最大市場になったと説明。政策面にも触れ、ASEAN(東南アジア諸国連合)とインドの自由貿易協定により関税が安く、低燃費・低価格車への優遇税制「低価格グリーン・カー(LCGC)プログラム」の導入が予定されていることも好条件だとした。
 ビスワデフ社長はまた「販売ネットワークが最も重要」と強調。製品投入までに10―15カ所の販売店を設ける。3年以内にサービスワークショップを100カ所まで、スペアパーツ店を300カ所、スペアパーツ倉庫を4カ所まで増やす。
 20日に開幕するインドネシア国際モーターショー(IIMS)にも今年初参加。「ナノ」をはじめ、乗用、商用車計14台を屋内外で出展する。
 タタ自動車は、インド最大の自動車メーカーで、商用車(バス・トラック)部門は世界4位の規模を誇る。伊のフィアットと提携しインドで合弁事業を立ち上げたほか、04年には韓国・大宇のトラック部門、08年にはフォードから高級車ブランド「ジャガー」と「ランドローバー」を買収。総合自動車メーカーとして海外展開を強化している。

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