「女性の肌、露出するな」 来月のミス・ワールド イスラム団体が開催反対
インドネシアで来月初開催されるミスコンテスト「ミス・ワールド」世界大会を控え、イスラム学者会議(MUI)などイスラム団体が改めて開催反対を訴えている。英国の主催者は、世界最大のムスリム人口を抱えるインドネシア側の要請を受け入れ、今大会では水着審査を中止すると発表したが、女性の肌を公衆の面前にさらすイベントはイスラムの教えに反するとの反対意見は根強い。
MUIは23日、5日に地方支部代表らを集めて開いた会議で、同大会の開催へ反対する方針を決めたと明らかにした。女性が体の隠すべき部分を見せることがイスラムの教義に反することに加え、華やかな衣装などを着用する同大会が、インドネシアや他の発展途上国の社会に悪影響を与えるとの見解を示した。宗教見解(ファトワ)は出さないとしつつも、政府に開催中止を検討するよう求めている。
反米デモなどを起こしてきたイスラム団体ヒズブット・タフリル(HTI)は20日、大会がスポンサーの商品宣伝に女性を利用し、女性の身体的な美しさだけを追求し、女性の地位をおとしめるとして反対を表明。開催予算も1200億ルピアに上り、資金が無駄に使われるとして、政府に開催許可取り消しを求めた。
国家人権委員会のマネゲル・ナスティオン委員は26日、「美しさは人に見せるためでも、競うためのものでもない」と話し、インドネシアが開催国になるべきでないとの見解を示した。
岩手県立大学の見市建准教授(政治学・地域研究)は、同大会へこれまでにインドネシア代表が参加してきた背景もあり、MUIなどの反対が開催中止につながる可能性は低いと見ている。その上でイスラム団体などは、資金の浪費など、多くの一般市民から支持を得られる理由を挙げ、説得力を高めようとしているのではないかと話した。
ジャカルタ市民に賛否を問うと「ムスリムの女性は夫や家族以外に肌を見せるべきではない」との答えが圧倒的だ。衣料品店の女性従業員のイスワトゥン・ハサナさんは「ビキニなどの水着は低俗」と見る。
しかし、男性を中心に建前は否定的だが許容する人も多い。会社員のトゥリスナさん(18)は「コンテストで着用される衣服の独特なデザインが興味深い」とイベントを楽しみ、オフィスビルの警備員も「きれいな女性たちが公に自身の魅力をアピールできる場があるのは良いことだ」と話した。
■自国の文化振興に
大会主催者のミス・ワールド機構は6月上旬、ムスリムが人口の大半を占めるインドネシアの国民感情に配慮するとして、参加者はビキニを着用しないと発表。インドネシア側主催者のインドネシア最大のメディアグループ「MNC(メディア・ヌサンタラ・チトラ)」は、ビキニではなくインドネシアの織物をサロン(腰巻き)として着用することで、文化を振興できると主張していた。
大会の会場の一つとなるバリ州の知事は、バリをはじめとするインドネシアの観光振興につながるとして積極的に誘致を進めてきた。
世界各国を代表する参加女性らが知性や体力に加え、水着姿で美しさを競い合う同大会は1951年に英国で初開催。95年と09年にアラブ首長国連邦で大会日程の一部が開かれたが、ムスリムが国民の多数を占める国が主催国になるのは、今年インドネシアで開催予定の第63回大会が初。
大会には世界各国を代表する130人以上が参加する。来月7日からバリ州バドゥン県ヌサドゥアで始まり、最終選考は28日、西ジャワ州ボゴールの多目的施設「スントゥール・インターナショナル・コンベンション・センター」で開かれる。(宮平麻里子、和歌山大学3回生・高越咲希=インターン)