日イで奏でる復興の願い「流木のバイオリン」で演奏 豪在住の石川さん イオン環境財団植樹で
イオン環境財団(岡田卓也理事長)が主催するジャカルタのマングローブ植樹活動の開会式で25日、2011年の東日本大震災で被災した岩手県陸前高田市に残された流木で作られたバイオリンがインドネシアで初披露された。
豪州在住のバイオリニスト石川綾子さんが「アメイジング・グレイス」や「上を向いて歩こう」の曲を演奏し、復興を願う音色が会場にこだました。観客からは暖かい拍手が送られた。
バイオリンは、世界的なバイオリン修復家で知られる中澤宗幸さんが「震災を風化させない」との願いを込め製作した。裏板には、津波に耐えた「奇跡の一本松」が描かれている。
「東日本大震災の記憶をインドネシアの人々の心に響かせたい。大災害を経験した両国だから共有できる」と話す石川さん。製作されたバイオリンは復興のシンボルとして、昨年3月11日に陸前高田市で初演奏されたのを皮切りに、世界のバイオリニスト千人がリレー演奏するプロジェクト「千の音色でつなぐ絆」として世界や国内の演奏会で引き継がれる予定だ。
石川さんは同市で初めて演奏した時、観客から「ありがとう」と言葉をかけられたのを鮮明に覚えているという。今後も国内でこのバイオリンを演奏する機会があり、「被災地の人はまだ頑張っている。震災の記憶を1人でも多くの人に伝えていく」と力を込めた。
■3年間で6万3千本
北ジャカルタのパンタイ・インダ・カプックの沿岸部であった植樹には、流通大手イオンの岡田卓也名誉会長とイオンの関連会社、取引先、一般公募から自費で集まった日本人約1100人とインドネシアの非政府組織(NGO)や高校生など400人、イオン各グループ会社の税引前利益の1%を使って環境保全や国際交流などの活動を行う「イオン1%クラブ」内の事業「イオン・アジア・エコリーダーズ」の80人の計約1600人が参加した。
エコリーダーズのインドネシア人参加者ファウザン・フィファルディ・ナンディカさん(18 )は「日イ両国は大地震を経験した被災国。津波を防ぐマングローブを植えることで、自然災害への意識を高めていきたい」と感想を語った。
被害が深刻化するジャカルタの洪水を食い止めようと、活動は11年に開始し、今年が最終年。3年間で4300人の参加者が6万3千本のマングローブを植樹した。今後はジャカルタ特別州環境局に管理を委託する予定だ。
(小塩航大、写真も)