政府が緊急経済対策 収支改善や投資加速軸に 先行き不安受け
ルピアや株価の急落による経済先行き不安を受けて政府は23日、緊急経済対策を発表した。経常収支改善、経済成長維持、購買力維持、投資加速の四つを主眼に、危機に対応する姿勢を強く示した。
閣議後の記者会見で、ハッタ・ラジャサ経済担当調整相、ハティブ・バスリ蔵相、ヒダヤット工業相が対策の内容を説明。輸出産業への減税などを通じて輸出促進を図るとともに、軽油のバイオディーゼル燃料比率を引き上げることで石油や天然ガスの輸入を減少させる。高級品の輸入税を現在の平均75%から125〜150%に引き上げ、消費財の輸入抑制も目指す。鉱物資源の輸出についても、割当量などで規制緩和する。
インフレやルピア安の影響を受けやすい労働集約型産業に対する減税を実施するほか、0・5馬力のエアコンなど、すでに贅沢品とはみなされない製品への奢侈品販売税減免も進める。また、牛肉など食品の流通体制を整備し、中銀や金融サービス庁(OJK)と緊密に連携していくことでインフレ抑制と購買力維持に務めるとしている。
投資加速に向け、投資手続きの簡素化や投資規制のネガティブリストの早期改正、輸出型産業への投資が進むようインセンティブを与えることなどを検討する。
ヒダヤット工業相は、労組からの要求が高まる最低賃金の大幅引き上げに対し、政府は大統領通達を通じ、インフレ率を大きく上回ることのないような最賃算出方法の指標を定める意向を表明。地方首長に協力を呼び掛けるとともに政労使の三者協議で労組側にも理解を呼び掛けていくとした。
ハッタ調整相は優先課題として「経常赤字に対処し、ルピアと株価を安定させること」と強調。第2四半期の経常赤字が98億ドルと第1四半期(58億ドル)の2倍近くになっており、資金流出の大きな要因になっていた。
ハティブ蔵相は、補助金付き石油燃料値上げ後の7月、燃料消費が政府の割当を下回り、財政赤字の拡大が食い止められていると説明し、国内総生産(GDP)比で今年の予算で予定する2・38%以内に抑えることができるとの見通しを示した。
経常赤字悪化や高インフレへに加え、米国の金融緩和政策の早期縮小観測により19日からルピアは6%、株価は8・7%下げるなど他の新興国と比較しても突出して大きく下落しており、政府は対応を迫られていた。
同日の閣議で、大統領は「決定した多くの政策をすぐに実行に移す」と述べ、関連閣僚は休まずに働き、確実に政策を遂行するよう求めた。さらに2008年はインドネシアは金融危機からいち早く抜け出したことに言及。危機を乗り切るには官民が一体となって対処していく必要があるとして、企業や地方政府にも政府方針に従うよう求めた。政策の詳しい内容については、関連省庁の大臣や財界が内外に向け、丁寧に説明していくよう指示したという。
■「短期的な効果ない」 政策発表に市場反応薄
23日の政府の経済対策の発表を受け、為替、株式、債券の金融市場は穏やかに推移した。市場関係者の間では「以前からの指摘を基に、改めて政策という形で打ち出しただけのもので、想定の範囲内。短期的に効果が出るものではない」との観測が強まったことが主因。対ドルルピアでは月末のドル決済増加の季節要因もあり、ジリ安で推移し、足下では様子見の展開が続きそうだ。
23日の対ドルルピア為替市場の銀行間取引の実勢レートは、前日と大きく代わらず1ドル1万1200〜1万1500ルピアの間で動いた。中銀が公表する参照レートの「ジャカルタ・インターバンク・スポット・ドル・レート」(JISDOR)は23日に前日比53ルピア安の1万848ルピアを記録した。
ジャカルタ証券取引所の総合株価指数は前日比1・586ポイント(0・04)マイナスの4169・827ポイントで引けた。
高級車の完成車輸入への奢侈品販売税を現行の75%から125〜150%に引き上げるとの方針が表明されたが、自動車メーカーの間では「現行の75%が課税される高級車は台数ベースで全体の約5%未満。税率を引き上げたところで、全体の販売に大きな影響はない」(大手メーカー幹部)との見方が大勢だ。(赤井俊文)