汚職撲滅委にマグサイサイ賞 「アジアのノーベル賞」が高く評価 「訴追と啓発活動」 「被告有罪率100%」

 ラモン・マグサイサイ賞財団(フィリピン・マニラ)は25日、インドネシアの独立捜査機関・汚職撲滅委員会(KPK)に2013年マグサイサイ賞を授与すると発表した。今年で設立10年を迎えるKPKは、インドネシアを「世界で最も腐敗した国」から「世界で最も称賛される反汚職キャンペーンの国」にしたと評価。大型汚職事件の訴追や啓発を通じ、汚職撲滅への主体的な市民参加を促進したとたたえた。
 同財団はKPKについて、2003〜12年、政府高官らが関与した332件の大型汚職事件を捜査し、うち訴追した169件の被告人全員に有罪が下されたと指摘。「妥協しない有力高官の訴追と主体的な市民参加を促す啓発活動を組み合わせることで、独立性を固持し、反汚職キャンペーンを成功させた」と評価した。
 04〜10年、KPKは8056億ルピア(約78億円)の損害金を被告人から国庫に返還させたほか、政府高官の個人資産報告、政府機関の運営システムの監視を通じ、汚職の機会低減に努めたと称賛した。
 国会がKPK庁舎の建設費配分を拒否するなど、嫌がらせや脅迫に直面しながらも、設立から10年を経た現在、世論の支持を得たKPKは「インドネシア人の改革と希望のシンボルになった」「世界でも数少ない効果的な反汚職機関の一つだ」とたたえた。
 受賞の発表に対し、KPKのバンバン・ウィジョヤント副委員長は25日、「賞は設立以来のKPK職員全員だけでなく、汚職撲滅に取り組んできた市民、NGO、活動家、メディアなどすべての人々のためのものだ」と謝意を表明。「受賞を機に国民の期待に応えられるよう、改めて気を引き締め、汚職撲滅に取り組んでいきたい」と意気込みを語った。
 今年の同賞はKPKのほか、フィリピン、ミャンマー、アフガニスタン、ネパールの活動家らが受賞した。
 これまで同賞を受賞したインドネシア人は22人で、アリ・サディキン・ジャカルタ特別州知事、アブドゥルラフマン・ワヒド(グス・ドゥル)元大統領、ディタ・インダ・サリ氏(元労働活動家)ら。昨年は森林保護を推進するアンブロシウス・ルウィンドリヤルト氏。組織はKPKが初めて。
 95年、ノーベル賞候補にも名前が挙がった文豪プラムディヤ・アナンタ・トゥール氏が受賞した際、マグサイサイ賞受賞者のモフタル・ルビス氏らインドネシアの作家26人が「共産党系団体で他の作家の言論を弾圧したプラムディヤ氏は受賞に不適格」と抗議したことがある。

◇マグサイサイ賞 
フィリピン第7代大統領のラモン・マグサイサイ氏(飛行機事故で死亡)を記念し、米国のロックフェラー財団が出資して1957年に創設。ラモン・マグサイサイ財団が運営し「アジアのノーベル賞」とも称される。政府、公共サービス、社会指導、報道・文学、平和・国際理解、新興指導者の6部門。過去の受賞者はインドが最多の51人、フィリピン44人。日本からは緒方貞子氏(国際協力機構特別顧問)、秋葉忠利氏(元広島市長)ら24人、インドネシアとタイはそれぞれ22人受賞している。

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