【火焔樹】それぞれのプアサ
私の知り合いのクリスチャンのインドネシア人はプアサをしている。しているといっても毎日ではなく 1週間だけ。その目的はムスリムと同じ。クリスチャンでもプアサの概念はある。敬虔なクリスチャンは、毎月短期間プアサを行っている人はかなりいる。
「プアサイコールイスラム」と思っている人もたくさんいると思うが、何もプアサはイスラムだけのものではない。知っている人も多いだろうが、英語で朝食は「ブレックファースト (breakfast) 」これをインドネシア語に直訳すれば「ブカ・プアサ(断食明けの食事)」となる。夜中寝ている間は当然何も食べないので断食ととらえられ、朝食はブカ・プアサとなるのだ。つまり、世界の誰もが断食をしていることになる。
世の中の多くの人が活発に動くのが朝8時から夕方5時までと考えると、なかなかプアサを継続的に行うのは正直言って困難な面もある。だからプアサを知らない人は、何て非常識で不健康なことをやっているのかと思ってしまう人がいても仕方ないかもしれない。
しかし、宗教的な意味合いでなくとも、プアサをすることにより、内臓を休ませ、余分な脂肪を取り、体内の毒物を取り除き、老廃物を排出させ、体の抵抗力が増すなどと、医学的にも健康的な断食の効用を説く専門家も多くいる。プチ断食をダイエット目的でやっている奥様方ならおわかりだろう。
その昔、世の中に決められた勤務時間などなかった頃、自分で自分の時間をうまくコントロールし、プアサを継続しやすいように時間を自分に合わせることが可能で、1カ月続けて行うことも今より容易だっただろう。現代は、決められた1日の時間の合間を縫ってプアサをするような状況になってしまっているため、とても辛いイメージがつきまとっている。
大変だと感じたらいつでも「断念(batal)」していいのがプアサ。そんな時は、いつでもいいからもう一度、一番やりやすい時を選んで(違う月に)やり直せばいいのだ。誰もとがめる権利はない。本人と神様の2人だけの約束事なのだから‥。(会社役員・芦田洸)