売春宿めぐり衝突 強硬派「断食月営業やめよ」 住民「取り締まる権利ない」 中部ジャワ州クンダル

 18日午後2時ごろ、中部ジャワ州クンダル県スコルジョ郡ングランチャ村で、売春宿を閉鎖しようとするイスラム強硬派団体イスラム擁護戦線(FPI)とそれに反対する住民が石を投げ合うなどして衝突した。FPIの車にはねられた女性が死亡し、FPIと住民合わせ、少なくとも5人が重軽傷を負った。死者を出す騒ぎを引き起こしたとして、強硬派によるラマダン(断食月)中の一方的な「取り締まり」への批判が高まりそうだ。
 地元メディアによるとFPIの数十人は中部ジャワ州トゥマングン県から車7台でスコルジョ郡ングランチャ村に乗りつけたが、住民が石を投げるなどした。FPIはその場から逃げ、うち1台が走行中の二輪車にぶつかり、運転していた地元の女性が死亡した。事故を知った住民数百人が車に放火、FPIの数十人はクンダル県内のモスクに逃げ込んだ。
 FPIは17日にも、スコルジョ郡の数カ所で売春宿とされる建物の器物を壊すなどし、地元住民と対立していた。同日夜、住民の代表が損害の弁償を求めてトゥマングン県のFPI支部を訪れたが、和解できなかったという。18日、FPIと争ったングランチャ村の住民はFPIが来ることを知っていたとみられる。
 FPIは警察が放置しているングランチャ村の売春宿を取り締まろうとしたと主張。これに対し、住民はFPIに取り締まる権利はないと訴える。住民の1人はオンラインメディアのムルデカ・コムに「罪もない女性が亡くなった。暴力的な集団は許せない」と話した。
 警察はラマダン前から、暴力行為を止めるよう強硬派団体に呼び掛けてきた。ザイナル・アビディンFPI中部ジャワ支部副部長は「ルールが守られていれば、われわれが取り締まる必要はない」と暴力を正当化した。
 クンダル県警は運転中に事故を起こし女性を死なせたとしてFPIの1人、住民との衝突中に刃物を持っていたとして2人を逮捕した。警察と国軍は現在、トゥマングン、クンダルの県境で警備している。
 国会第3委員会(法務・地方自治・人権担当)のエファ・クスマ・スンダリ委員(闘争民主党議員)は19日、このほど国会で可決された市民団体法を適用し、FPIを解散させるよう求めた。同法は大統領の署名を経た来月2日、施行される見通し。
 同法特別委員会委員を務めたイスラム系福祉正義党(PKS)のインドラ議員は同法適用に否定的な見方を示し、「警察が取り締まらないから、FPIが行っているのではないか」と擁護した。

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 イスラム擁護戦線(FPI) 治安が悪化したスハルト政権崩壊後の1998年10月、国軍・警察が自警団の一つとして組織した別働隊で、治安対策に投入された。宗教講話の集会を開くなど宗教団体として活動する一方、イスラム少数派やキリスト教徒、売春施設を襲うなど暴力的集団として知られ、各地で反対運動が起きている。中央ジャカルタ・タナアバンに本部を構える。

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