「融合と調和を」 アジアの文化交流 安倍首相肝いり懇談会が初視察
ASEAN(東南アジア諸国連合)を中心としたアジアでの日本の文化交流を促進させようと、安倍政権の肝いりで立ち上げられたアジア文化交流懇談会の委員9人が14〜16日の日程でジャカルタを訪問している。15日夕、インドネシアの文化人たちと4時間にわたり意見交換。互いが文化の違いを認識した上で、アジアの文化の融合や調和を目指し、対話やコラボレーションを継続していくことが大切との認識を共有した。
日本大使館とインドネシア日本友好協会(PPIJ)が主催した両国の文化人による意見交換会では、インドネシア側の旗振り役となったラフマット・ゴーベルPPIJ会長のほか、歌手で国会議員のタントウィ・ヤフヤ氏ら、映画、音楽、舞踊、テレビなど各界の著名人が参加。猪子寿之氏が、デジタルアートなどの活動を紹介し、インドネシア側からはこれまでの日本とのコラボレーションなどについての説明があった。
ワフュ・アディティヤ氏が日本のコミックマーケットに影響を受け、インドネシアでコミックマーケットやコスプレイベントを開いた様子、著名ファッションデザイナーのエドワード・フタバラット氏が、京都の名門帯問屋の当主である山口源兵衛氏と協力し、インドネシアのバティックを使った浴衣を作ったことなどを紹介。会を終えたフタバラット氏は「話をするだけでなく、具体的な行動に移す必要がある」と意気込んだ。
14日にジャカルタ入りした一行は15日午前にブディオノ副大統領を表敬訪問。副大統領はインドネシアでの日本語振興とともに、日本でのインドネシア語学習も進めてほしいと要望し、ホームステイを通じた若者の交流も有意義として、両国の草の根レベルでの文化交流促進を継続していくことに期待を示した。
今回の視察に同行した安藤裕泰国際交流基金理事長は、経済産業省が中心となって進めるクールジャパンとのすみ分けについて、「外交的な視点から相互理解を深めていく双方向のもの。ASEANの文化を日本に紹介することも必要だ」と説明。手作業で作られるバティックに感銘を受けたコシノジュンコ氏は「ファッションは国境を取り除くもので、世界的な広がりを持つものにしていくことが大切。男性が華やかで、男性のバティックがいい。『ファッションショーは女性のため』というイメージがあるが、和太鼓などを組み合わせた新しいタイプのものをやっていこうという話をした」と話し、今後、何らかの形で具体化をしていく意欲を示した。
懇談会は、今年1月にジャカルタを訪問した安倍首相が対ASEAN外交5原則の中で掲げた方針に基づき、映画、音楽、ファッション、絵画などの各分野の有識者11人を委員として4月に発足。月1回のペースで会合を重ね、今回が初の海外視察となった。会合や視察を踏まえた上で、今年12月に日本で開かれる予定の日ASEAN特別首脳会議で、日本政府が発表する予定のアジアとの文化交流政策に向け提言する。今回は、映画監督の北野武氏と俳優の森田健作氏(千葉県知事)を除く9委員が参加した。
一行は16日早朝にジャカルタを発ち、タイ、ベトナムを訪問した後、帰国する。(上野太郎、小塩航大、写真も)
◇参加委員(敬称略)
山内昌之東京大学名誉教授(座長)▽井上弘日本民間放送連盟会長▽猪子寿之チームラボ代表▽コシノジュンコ(デザイナー)▽迫本淳一松竹社長▽知花くらら(モデル)▽鳥井信吾(サントリーホールディングス副社長)▽長谷川三千子埼玉大学名誉教授▽宮廻正明東京芸術大学教授(日本画家)