【火焔樹】 自分のことは自分で‥
私の運転手との会話。
運転手「長女が大学でホテルのマネージメントを勉強してます。あと2年で卒業。学費高いけど頑張って働いて卒業させてあげたい」
私「将来楽しみだね」
運転手「定年まであと8年。退職金で妻と一緒に巡礼へ行きたいと思ってます」
私「費用高いでしょ? 退職金全部終わっちゃうんじゃないの? 老後のことも考えなきゃ」
運転手「大丈夫です。このまま順調に行けば、少なくとも長女が就職して養ってもらえるはずだから。それに次女が続けば安泰です」
私 「子どもは子どもの人生があるんだし、結婚して子どもができて、家計のやりくりもして、今あなたが苦労してることを今度は彼女たちが経験するんだよ。できる限り、自分の老後は自分で何とかしないと、娘さんがかわいそうだよ」
結局結論は出ずじまい。子どもが親の面倒を見るのは当然だと譲らなかった。インドネシアでは、日本のような社会保障が充実しておらず、働けなくなった親の経済的な面倒を子どもが見るのは当然と考えている人がほとんどだ。
日本ではどうか。最近、子どもと孫に年金を送金しているおばあちゃんがいるとテレビのドキュメンタリーが切実に訴えていた。いくら不況だといえ「そこまでしなけきゃいけないの」と思ってしまう。
一方は親が子へ、他方は子が親や祖母へ期待を寄せる180度違う現象がインドネシアと日本では起こっているようだが、いろんな事情があるわけで非難するつもりは全然ない。それに、誰かが誰かのために一生懸命になることより他に素晴らしいことはないことを思うと、これを善しとせずに何とする。多少の違和感はそれぞれの社会のせいにしてしまえばいい。
さて、日本にいるワイフに「老後はどうするのとお尻を叩かれている」私はどうしようか。頼る子どももいないし、お金を無心する両親ももういない。誰もいないので自分のことは自分でするしかない。(会社役員・芦田洸)