ユドヨノ義弟に実権相続か 顧問就任、大統領候補にらむ 民主党
ユドヨノ大統領の義弟プラモノ・エディ・ウィボウォ前陸軍参謀長が国会第1党の民主党に入党、顧問会役員に就任したことが分かった。民主党が29日に開かれた幹部会議後、明らかにした。地元各メディアが報じた。プラモノ氏がユドヨノ大統領(党首)から党の実権を継ぐための布石を打ったとの見方も上がっている。
プラモノ氏は5月に陸軍トップの陸軍参謀長職を退任し退役した。陸軍在籍時から政党入りが確実視され、特にユドヨノ氏が率いる民主党入りの公算が高いとみられていた。国会第2党ゴルカル党が副大統領候補に検討したこともある。
民主党は近く党大統領候補の公開選出を控えているが、党内の若手有力政治家はハンバラン競技場汚職事件の容疑者に断定されており、「ユドヨノ大統領の次」が不在だった。
ユドヨノ大統領は2011年6月プラモノ氏を陸軍参謀長に任命。憲法で3選を禁じられるユドヨノ大統領が、14年の大統領選に向けてプラモノ氏の出馬環境を整えたとの見方が出る一方、縁故主義との批判が向けられた。
プラモノ氏が入党とともに顧問に就任したことについて、大統領に近いシャリフディン・ハサン党首代行は「プラモノ氏の陸軍参謀長の経験は顧問会役員にふさわしい」と記者団に説明。民間調査機関スグン・スルヤディ・シンディケイテッド(SSS)のトト・スギアルト氏は「プラモノ氏を民主党の大統領候補とするための準備。公開選出は形だけのものだ」として、プラモノ氏が最有力候補の見方を示した。
■陸軍エリート一族出身
プラモノ氏はアニ大統領夫人の弟で陸軍エリート一族。父のサルウォ・エディ・ウィボウォ氏は1965年のクーデター未遂(9.30事件)当時の陸軍特殊部隊の司令官だったが、スハルト政権では要職から外された。プラモノ氏自身は80年に国軍士官学校を首席で卒業し、メガワティ前大統領の大統領補佐官、陸軍特殊部隊(コパスス)司令官、陸軍戦略予備軍(コストラッド)司令官など要職を歴任した。ただ人権団体はプラモノ氏が99年の東ティモール侵攻時に人権侵害に関与した可能性を指摘している。
■公開選出は支持浮揚策
民主党は近く党大統領候補の公開選出を開く方針。これまでもジョコウィ・ジャカルタ特別州知事、ギタ・ウィルヤワン商業相、マーフッド前憲法裁長官らの参加が検討されてきた。
だが、候補の1人のマーフッド前憲法裁長官は先に「選出は不透明で、党の支持率を浮揚させるための仕掛けに過ぎない」と批判。汚職事件の容疑者で、ユドヨノ大統領と対立するアナス・ウルバニングルム前党首が参加を目指した際には、執行部は「選出を運営する委員会が、参加資格があるかどうかを考慮する」などとの説明で難色を示していた。
民主党の政党支持率は2月、ジャカルタ調査研究センター(LSJ)の世論調査で、6.9%だったが、先週発表されたインドネシア科学院(LIPI)の世論調査で11.1%をつけ、回復基調ともみられる。民主党の公式サイトによると、ユドヨノ大統領は29日の会議での演説で現金直接給付(BLSM)など政府の貧困対策を「プロ・ラクヤット(人民のための)」政策と説明している。(吉田拓史)