「軍拡競争防止を」 アジア安保会議で国防相 透明性向上呼びかけ

 プルモノ・ユスギアントロ国防相は1日、シンガポールでのアジア安全保障会議(英国際戦略研究所主催、5月31〜6月2日)で軍事の「戦略的透明性」をテーマに講演した。軍備増強は近隣地域共通の現象と指摘し「不安定な軍拡競争を招かぬよう、透明性を実現する必要がある」と訴えた。インドネシアが近年急速に進める軍備の近代化については、アジア通貨危機やスハルト政権崩壊後の1998年からの国家改革の一部として進められ、「失われた10年」の遅れを取り戻すためのものとして理解を求めた。                              
 国防相は「軍の近代化はインドネシアだけでなく、アジア太平洋地域に共通の現象だ。インド亜大陸から朝鮮半島、中国からオーストラリアまで、各国が経済成長とともに国防費を増額し国防能力を高めている」と現状を分析。一方で「軍備増強が誤算や不信感を助長し得ることを忘れてはならない」と指摘した。
 具体的には、開かれた議会での予算審議とともに、軍備の調達過程や、他国との政策対話などでも透明性を担保することが重要と訴えた。
 国防・軍事費をめぐっては、軍備拡張を続ける中国の公表額と実際の値が大きく離れているとして、米国や日本などが透明性向上を求めている。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると東南アジア諸国ではこの10年で、国防費が4割以上増えたいう。
 インドネシア自身、軍事費にも不透明な点が多いものの、あえて問題に言及したのは、中国を意識するとともに、ASEAN(東南アジア諸国連合)の中心国として、自国の存在感を示す狙いがあるとみられる。

■「最小必須戦力」構築を

 インドネシアは、98年のスハルト政権崩壊後、議会で自動的に一定議席が与えられるなど政治も担う「国軍の二重機能」解体やシビリアン・コントロールの確立などの国軍改革に取り組んできた。
 軍備の近代化については、アジア通貨危機後、これまで経済再建を最優先したため、国防関係が後回しになっていたことを説明。GDP(国内総生産)に対する国防費の割合は、最も低かった01年の0.6%とどまり、2000年代後半まではGDP比1%以下の状態が続いてきたとし、「最少必須戦力を構築することが課題だ。『失われた10年』の間に生じたギャップを埋めるため、国防費を増やすことには政府も議会も合意している」と説明した。
 インドネシアは2024年までに「最少必須戦力」の構築を掲げ、近年陸海空軍向け予算を増加させ、潜水艦や戦闘機などの配備を進めている。(道下健弘)

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