【林哲久の為替・経済ウィークリー】インフラ進まず 遠のく投資適格

 インドネシアのインフラ投資の対GDP(国内総生産)比率は、過去10年平均で3%に止まっており、アジア危機以前が7%台であったのと比較しても、大きく見劣りする水準に低迷している。
 世銀の調査によると、中国、タイ、ベトナムといった近隣アジア諸国が7%以上であることを見ても、水準の低さが際立っている。土地収用法の適用に関する問題点やプロジェクト準備、業者の選定方法に関する関係省庁間での調整不足などの問題点が複雑に絡み合っているために、インフラ投資が遅々として進まない現状が浮き彫りとなっている。政府による適切なリーダシップにより、しっかりとした規制の適用が実施され、関連省庁による迅速なプロジェクトの遂行が実施されることを期待したい。
 一方、インドネシアのもう一つの課題である燃料補助金の削減策についてのユドヨノ大統領の指導力不足は目に余るものがある。決められない政治、あるいは責任をとりたがらない性向がこの国の特徴のひとつであるとしても、ここまで優柔不断であると、国民の愛想も尽きてしまうかもしれない。特に、貧困層への社会保障の充実とセットとする法案を準備するとの方針が大統領から示されているが、本来の趣旨は、補助金削減で浮いた財源をインフラ投資に向けるのがあるべき姿であったはずだ。
 一方、3月貿易収支は、6カ月ぶりに黒字化したが、内容を見ると、食料品の輸入規制と資本財の輸入の減少による不健全な輸入の減少による黒字化であり、今後の総合収支の安定的黒字化とはほど遠い内容となっている。また、4月消費者物価指数は5・6%と前月から低下はしたものの、今後、燃料補助金が削減されるとインフレ率は6%台に乗ることが確実視されており、政府としては厳しい選択を迫られることとなる。
 こうした最近の政府の煮え切らない姿勢を受け、S&Pはインドネシアの格付け見通しを「ポジティブ」から「安定的」に引き下げた。その理由としては、財政構造改革の遅延と対外収支の悪化を挙げている。投資適格がさらに遠いてしまった。(三菱東京UFJ銀行ジャカルタ支店・林哲久)

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