宗教少数派への迫害続く 異端派居住区を襲撃 イスラム強硬派 西ジャワ州タシックマラヤ
5日午前1時ごろ、西ジャワ州タシックマラヤ県ババカン・シンダン村で、イスラム強硬派のメンバー100人以上がイスラム異端派アフマディヤ信者の居住区を襲撃した。けが人はなかったが、家屋20軒以上のほか、モスクや屋台が投石を受けた。近年続発する宗教少数派への暴力事件は、多様な信仰や民族を抱えるインドネシアの基盤を揺るがしかねず、制止できない政府への不満が高まっている。
地元メディアによると、イスラム強硬派のメンバーは木の棒や石をアフマディヤ信者宅の窓に投げつけた。家屋に火が放たれたとの報道もあり、信者は庭などに身を潜めて身を守ったという。当時、数人の警察官が周辺で警備に当たっていたが、襲撃を止めることができなかった。県警は「襲撃を止める努力はした」と釈明、犯人の特定を急いでいる。
4日午後8時ごろ、アフマディヤは警察の警備下でプンガジアン(イスラムの勉強会)を開いており、イスラム異端派とされるアフマディヤの宗教活動を不快に思う集団の犯行との見方が出ている。信者の一人はオンラインメディアのドゥティックコムに「強硬派の人数が多く、警察は何もできなかった」と話した。
アフマディヤ側は、警察が4日午後9時〜同11時の間にイスラム強硬派による襲撃の可能性があると注意喚起していたと証言。法律擁護協会(LBH)は5日、地元警察が襲撃計画を事前に知っていた可能性があるとして適切な警備をしなかったと批判した。
バンテン州パンデグラン県で2011年2月に起きたアフマディヤ信者虐殺でも、襲撃計画を関知していた警察は少人数の警察官しか配備せず、信者3人の虐殺を制止できなかった。アフマディヤ信者が撮った動画に刃物を持った強硬派を傍観する警察官の姿が映っていたことで批判が噴出した。同事件の公判で判事は「アフマディヤ側が暴動を扇動した」と指摘。首謀者12人に殺人罪は問わず、武器の不法所持などの罪で禁錮3〜6月の軽い判決を下した。
イスラム信仰が強い西ジャワ州ではアフマディヤの居住区を襲う事件が多発している。州内各地でアフマディヤの活動自体を禁じる条例が出ており、人権団体は強硬派による襲撃の口実を与えていると批判している。人権団体「民主主義と平和のための調査研究所(スタラ)」によると、2007―09年にアフマディヤへの襲撃事件は33件起きた。(上松亮介)
◇アフマディヤ
当時英国領のパキスタンで生まれたイスラムの一派。ムハンマドの後にも預言者がいるとし、ムスリム主流派の反感を招いている。インドネシアには1920年代以降に広まり、国内に50万―60万人いるとみられる。布教や活動を禁じた共同大臣令、地方条例が出され、異端派とされている。
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