「覚悟持って進出を」 「上り坂」から「踊り場」に 【下請けサバイバル】(1)総論

 今年に入り、インドネシア経済の潮目が変わったとの声が強まっている。二輪車や家電消費の一巡、最低賃金の上昇やインフレ懸念などに加え、政治の季節を迎えたことを背景に、地元経営者の認識は「上り坂」から「踊り場」に移りつつある。一方、中期的な成長余力はまだまだ高いため、市場縮小が続く日本からの進出は依然相次いでいる。そんな中、インドネシアで長年、中小企業の日本人経営者たちにじゃかるた新聞の座談会に参加してもらった。1990年代後半のアジア通貨危機、スハルト政権崩壊の経験者などいずれも劣らぬ「猛者」ぞろい。今後進出を検討している、またはすでに進出が決まっている企業経営者に向け、インドネシアでの経営のポイントや注意点などを「これからインドネシアに来る人が後悔せず、覚悟をもって進出できる手助けをしたい」(座談会出席者)という思いから幅広く語ってもらった。

 A「今回の座談会は今後インドネシア進出を考えている、もしくはすでに進出が決まっている企業経営者向けということで、まず今年に入って雰囲気が変わったことは強調したい」
 B「2年前とは明らかに違うよね。政治的安定の下で経済成長が続く、という『バラ色のインドネシア』って感じだった。年寄りを白状するようで嫌だけど、昭和30年代の池田勇人首相の所得倍増計画の時期みたいに思えたね」
 C「例えば二輪車で言うと2年後には各家庭に3台ある計算になるという予測もあるし、家電も新しく買うっていうより買い替えの時期に移行した。これまでは内需主導で来たけれど、2、3年後は完全に読めない。日本の報道だけ見てると未だにバラ色にしか思えないだろうけど、商売ってビジネスマンガとかニュースが騒ぎ始める頃にはすでにオイシイ時期が終わってることが多い。ITもそんな感じだったじゃない。やっぱりもう踊り場にあると思って、頭を冷やさなければならないのではないか」

■人件費増厳しく
 D「さて、今回の座談会では(1)組合(2)経営(3)人材(4)進出―の四つに分けて話そうってことなんだけど」
 B「経営者としては(1)組合が深刻。日系企業が『組合』に狙われることが多いから、経験談を交えながら、この問題にどう取り組んでいくか考えていきたい」
 D「次にやっぱり(2)経営。最低賃金の上昇は痛い。中小企業は体力の面でどうしても大企業には勝てないから、人件費は収支を直撃する」
 A「取引先への製品値上げ要求も通らないしね。自分も含めてこの中に大企業からの転職組もいるけど、あの時は全くそんなこと考えなかったからな」
 D「銀行屋さんも進出するときは景気がいいこというけど、落ち目になると相手にしないし」

■仕事あるが保証は
 B「愚痴っぽい話も含めて後でじっくり話そう。次は(3)人材。デキるやつほどやめてくんだよなあ、インドネシア」
 A「引き抜きとか今でもあるしね。給料が倍になればそっちにいくのが人情だけど、育てた身になると『なんだよ』って思うよね。納期に影響も出るし」
 C「最後に(4)進出について。製造業で最低資本金が上がるなど、前よりも進出が難しくなった。インドネシアが自信をつけてきたってことで、いいことではあるんだけどわれわれの立場からは厳しくなった」
 D「自動車業界は今、仕事はあるけど、この先は分からないしね。『仕事はあるけど保証はない』ってことはしっかり認識しないとだめだよな」

■少しでも参考に
 B「でも、業界問わず、日本にいてもどうしようもなくてインドネシアで頑張るしかないって企業が一番しんどいのは確か。この座談会でそういう人に少しでも参考にしてほしいと心から思う」
 A「僕らみたいな中小企業は自分たちの広報は持ってないわけで、普段どうしても大企業のニュースが多くなりがちな、じゃかるた新聞で思ってることを言わせてもらおう」(赤井俊文、連載2回目以降は8日付から毎週水曜7面に掲載予定)

◇座談会のメンバー
A 電子機器メーカー社長、70代(東ジャカルタ)
B 自動車部品メーカー製造担当取締役、60代(ブカシ)
C プラント向け工業部材の合弁企業社長、60代(東ジャカルタ)
D 容器包装類メーカー社長、60代(ブカシ)

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