地域経済統合推進を 保護主義抑制、投資自由化を議論 スラバヤでAPEC貿易相会議 経産相、関税過払いに懸念
21カ国・地域が参加するアジア太平洋経済協力会議(APEC)貿易相会議が20、21の両日、東ジャワ州スラバヤで開かれた。保護主義の抑制や地域の経済統合、貿易投資の自由化などをテーマに議論。最終日には、より高いレベルでの自由貿易体制を作る上で、環太平洋連携協定(TPP)など地域的な取り組みを進展させることが重要だとする共同声明を採択した。声明は10月にバリであるAPEC首脳会合での議論のたたき台になる。日本からは茂木敏充経済産業相が出席した。
会合では、世界貿易機関(WTO)の多角的通商交渉(ドーハ・ラウンド)を支持することで一致し、多角的貿易体制の強化について個別の声明も発表した。15年まで新たな保護主義的措置を導入しないとした昨年のAPEC首脳会合の合意目標を、16年末までに延長するよう、各首脳に進言する。2011年以降進ちょくのないドーハ・ラウンド交渉の状況を踏まえた措置。WTOで進んでいるIT製品の関税撤廃品目拡大に向けた交渉については、今年半ばまでの妥結を奨励するとした。
閣僚共同声明では、インドネシアがAPEC議長国を務めた1994年の首脳会合で取りまとめ、2020年までに貿易投資の自由化を目指した「ボゴール目標」に向け、地域で取り組みを進めることを再確認した。加盟国・地域全てを対象にしたアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)構想の実現には、TPPやFTA(自由貿易協定)、5月に交渉入りする東アジア包括的経済連携(RCEP)=ASEANと日中韓印など16カ国=など、地域的な取り組みを進展させることが重要との認識で一致した。
会合で茂木氏は、日本がTPPやFTA、RCEPを多層的に進め、地域の経済統合に向けたリーダーシップを発揮する考えを表明。インフラ整備にあたり、価格だけでなく耐久性や環境への影響を考慮すべきとの提案は声明に反映され、指針作りを進めることで合意した。
このほか共同声明には、インドネシアが提案した、中小企業や女性の経済参画に向けた取り組みを強化のほか、他国への技術支援で削減した温室効果ガス排出の削減を自国の削減量とみなし、日本が主導する「2国間オフセットクレジット」の仕組みを広げていくことが盛り込まれた。
茂木氏は会期中、ギタ・ウィルヤワン商業相や米通商代表部(USTR)のマランティス代表代行、韓国産業通商資源部の尹相直長官らと個別に会談。ギタ氏との会談では、日本からインドネシアへの完成車輸入の一部で関税が過払いになっていた問題や、日本の鋼板に反ダンピング(不当廉売)課税を発動したことに対し、懸念を伝えた。ギタ氏からは、大蔵省にも伝達するなど、前向きに検討する趣旨の回答があったという。 (東ジャワ州スラバヤで、道下健弘、写真も)
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