「身体でわかり合う努力を」 任期終える水野理事長 きょうJJC役員交代
ジャカルタ・ジャパンクラブ(JJC)は17日、年次総会を開き、新役員を選出する。JJC理事長として昨年4月からの1年間、経済や文化などの交流活動に奔走し、きょう退任する水野正幸さん(三菱商事常務執行役員、アジア 大洋州統括兼インドネシア総代表)は「口だけで『協力関係とはこうあるべきだ』というのでなくて、身体でお互いにわかり合うための努力をしなければと強く思った」と力を込めた。
インドネシア経済が好調を維持した1年。日本からの視察団も相次いだ。水野さんは「以前と比べ、事前勉強をきちんとし、目的意識を持ってくる視察団が増えた。質問も具体的になってきた」と、実際の進出に結び付けようとする企業が増加していることを肌身に感じた。
「ただ、ネガティブな事例も出てきた1年だった」と水野さん。最低賃金の大幅引き上げや違法デモ、日本人の軟禁や暴力、アウトソーシング問題といった労働問題は、インドネシアの安価で豊富な労働力という評価を考え直す時期にきたことを伺わせた。
冷延鋼板のダンピング問題のほか、輸入ライセンスの問題など、内向きの規制強化も目立ったが、法人部会の意見具申活動を継続し、「法律はすぐに変えられないが運用の部分で対応する」というような回答を引き出すなど、一定の成果を挙げた。「正論で粘り強く進めれば、道は開ける。いい意味でのインドネシア政府の柔軟さが確認できた」と振り返る。
昨年11月には、JJC理事長としてインドネシア大学で公開講義に挑んだ。日本語学科以外の学生も多く、学生からは「日本企業は、本音では技術移転に消極的なのでは」といった辛辣な質問も上がり、日本に対する興味と期待の強さをひしひしと感じた。
今年初めには、在留邦人有志と日本に留学経験があるインドネシア人による交流会を企画。インドネシア人が半数を超え、予想を大きく上回る総勢220人が集まる盛大な会を実現させたのも良い思い出だ。「草の根で有志が作った会。企業の大きな支援なしで実現させ、達成感があった。同窓会活動が活発化して大きなうねりになり、両国間の交流の一つのパターンになることを願っている」
カディン(商工会議所)やアピンド(経営者協会)などとの経済団体との交流では、「懇親を進めてきたが、共同で何かに取り組むような関係は構築できなかった」と水野さん。「せっかくインドネシアで仕事をさせてもらっているので、自分の反省も踏まえ、地元との経済団体とより深い関係を築いてほしい」と次期理事長にバトンを託した。
理事長退任と合わせるようにして、3年の任期を終えて来月中旬に帰任し、定年退職を迎える。自宅のある神奈川県葉山の近くでサーフィンをするなど悠々自適に暮らしたいと話した。(上野太郎、写真も)