日本型消防団導入へ 地方防災の担い手に期待 北スマトラで準備開始

 日本型の消防団・水防団を普及させようという動きが北スマトラで始まった。自然災害多発国として、同様の地学的環境にある日本で発達した仕組みを参考に、地域の防災力強化を目指す試みだ。2004年のスマトラ島沖地震・津波を契機に近年、インドネシア政府も地方の防災能力強化を優先課題に掲げており、住民が担い手になった防災の取り組みとして、注目を集めそうだ。
 地元住民が参加する消防団は、現場の事情に詳しく、プロの消防士だけでは足りない人員を迅速に集めることができる。全市町村に同様の組織があり、ノウハウを共有できるため、全国的に一定程度の技術水準が保たれている。市町村が報酬や手当を支給し、団員確保やモチベーション維持にもつながっている。
 北スマトラ州でもこの制度を踏襲しようと、地元選出のパルリンドゥンガン・プルバ地方代表議会(DPD)議員らが中心に、団員の受け入れ窓口になる「消防団フォーラム」を設立。消防団の結団式も兼ねた「日イ共同消防・防水国際セミナー」(19日、メダン市)には消防団のリーダーになる約20人が参加し、両国の専門家から消防団の仕組みについての講義を受けた。
 フォーラムは今後、各地域で本格的に団員募集を開始する。地元自治体も団員への報酬など予算措置を検討しているという。
 プルバ氏ら国の代表者が昨年3月、国際協力機構(JICA)を通じた研修で岩手県大槌町など東日本大震災被災地を視察したのがきっかけ。避難の呼び掛けや救助、捜索など、消防団の果たした役割を見聞きした。
 インドネシアには全国的な自主防災組織はない。人口密度が低い地方では消防署の受け持ち面積が広く、消防士の現場到着までに時間がかかりがちで、資機材も脆弱(ぜいじゃく)だ。プルバ氏は消防団の導入がインドネシアの防災体制の充実に役立つと考えた。
 地方の防災をめぐっては、昨年10月のアジア防災閣僚会合(ジョクジャカルタ)でユドヨノ大統領が国家的課題として取り上げるなど、全国的な関心が高まっている。プルバ氏は「仕組みを充実させ、将来的には北スマトラ発で全国に消防団を広げたい」と期待する。州消防団には、地域や学校での防災学習にも取り組んでもらうことで、地域全体の防災意識が高める狙いもある。
 19日の会合に参加したJICAの徳永良雄総合防災政策アドバイザーは、プレート境界に位置し地震や津波、火山噴火などの自然災害が多い、日イ両国の共通点を指摘。「社会的環境が違っても、潜在的な環境は同じ。日本の消防団組織をインドネシアにも適用できる可能性は高い」と話している。(道下健弘)

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