【火焔樹】 コミッション文化
ジャカルタから引越しバリ島でインテリア用品の店を開いた知人の話。ある時タクシーに乗った客が店を訪れ買い物をした。しばらくすると客をどこかで降ろした同じタクシーが店に戻ってきた。「自分が店まで客を連れてきたのだからコミッションをくれと言うんだ。観光地でもないデンパサール、しかも客はローカル。ジャカルタでも店をやっていたが、こんな話は聞いたことがない」と彼はあきれ顔。同じようなことが数回あった後、タクシーや運転手付きのレンタカーで来た客にはコミッション分を価格に上乗せすることにした。
ある時は、ホテルの従業員を名乗る男性からこんな電話があった。「今からうちのボスを連れて買い物に行くから価格をアップしておいてくれ」と。その分を自分のコミッションにして欲しいというのだ。会社宛ての領収書の金額を割り増して書くよう言われたこともある。これも会社に代わって買い物をしたコミッションという感覚なのだろうか。その買い物客はインドネシア語がまだおぼつかない外国人。最初はいちいち腹を立てていた知人だったが、今ではこれもバリの文化なのだと納得している。
ガイドブックには特定のお土産に連れて行こうとするタクシーに注意とある。高額なコミッションが価格に転嫁されているからだ。なんだが両者がぐるになって観光客をだまそうとしているようだが「本当は店だってそんなことはしたくない。でもそうしないと客を連れてきてもらえないから」と知人は言う。
日本人の友人と彼女のジャワ人の夫と一緒に観光地のレストランで食事をした。バリのコミッションが話題になったので「試しに・・」とジャワ人の彼が後でレジに行くと封筒に入った10万ルピアを渡された。食事代の3割にもなる金額だ。こうしたレストランの価格がローカル客を相手にした店よりずっと高いのは、止むに止まれぬ「コミッション文化」のせいでもあるのか・・。(北井香織)