内紛のサッカー界統合 国務相「会議は成功」 火種は依然残る
協会幹部の内紛により分裂後、2リーグ2協会が並立していた国内サッカー界が統合することで合意した。17日、PSSI(インドネシア・サッカー協会)が臨時総会を開き、対立するKPSI(インドネシア・サッカー救済委員会)も同席の下、統合を決定。国際サッカー連盟(FIFA)の制裁は回避される見込みとなったが、6人の執行委員が途中欠席するなど依然として対立の火種は残り、統合後もしばらく混乱が続きそうだ。
中央ジャカルタのボロブドゥール・ホテルで開かれた臨時総会で、ロイ・スルヨ青年スポーツ担当国務相、FIFAの代表者などの立ち会いの下、KPSIがPSSIに合流する形での協会統合と2014年シーズンからのリーグ統合に合意した。会長はPSSIのジョハル・アリフィン氏が続投し、副会長にはKPSIのラ・ニャラ・マッタリッティ会長が就任する。
ロイ国務相は「会議は成功した」と合意にこぎ着けた成果を強調。マッタリッティ氏もKPSIの解散を宣言したという。FIFAやアジア・サッカー連盟(AFC)の代表者も合意には一定の評価を与え、制裁は回避されるとの見方が大半を占める。
しかしマッタリッティ氏が、事前に決定していた議題以外の項目を持ち出したことに抗議し、PSSIの執行委員6人が途中退席。「雪解けムード」を演出することはできず、両陣営の対立が根深いことをうかがわせた。
サッカー協会は権力闘争を背景に2011年に分裂、インドネシア・スーパー・リーグ(ISL)とインドネシア・プレミア・リーグ(LPI)という二つのプロリーグが並立する異常事態になった。分裂後は、スポンサー収入の減少などを背景に給与未払い問題が顕在化。また、ISLが代表チームへの参加を禁止するなど選手が割を食う構図が続いており国際的な非難も浴びた。FIFAは再三の一本化を迫り、昨年6月に2協会間で統合に向けた覚書を交わしたものの交渉は停滞。FIFAは国際大会への出場資格はく奪など制裁をちらつかせた結果、ようやく実現に至った。
■未払い解決には時間
給与問題は解決に向かうのか。インドネシアでプレーする日本人選手は「改善には向かうが一筋縄ではいかない」という見方でほぼ一致する。現在プレーする3選手は依然として、全員が過去に所属したチームからの未払いがある。
リーグ分裂で人気が二分されたことによる収入減もあるが、「飛行機代を立て替えたが返金がない」(松永祥兵選手=24、グレシック・ユナイテッド所属、給与未払い分5カ月)というように給与未払いの根底にあるのは個々のチームの管理能力不足。
ペルシブ・バンドンの足立原健二選手(28、同約8カ月半)は「給与問題は選手とチーム間の問題であり、協会が変わったところで大きくは改善しないだろう」と見ている。
デルトラス・シドアルジョの酒井友之選手(33、同約1カ月)は「多くのチームが未払いを抱えており、『遅延、未払いが当然』という雰囲気がある。未払い分の給与は自ら要求しなければ支払われることはない」という。協会とリーグはひとまず統合へ向かうが、チームのマネジメントが向上し選手の待遇が改善するにはまだ時間がかかりそうだ。(堀之内健史)
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