【性同一性障害を歩む】 サヨナラ、私の孤独
心と体の性別が一致しない性同一性障害者「トランスジェンダー」。葛藤しながらも、自分なりの生き方を追い求める姿をカメラで追った。
アレクシス・スーサン・パリマさん(20)が顔にパウダーを幾重にも塗っていく。あっという間に褐色だった肌が真っ白になった。鏡で何度も化粧を確かめ、最後にピンクの口紅を塗った。「生まれたときから、心は女の子だった」
ホルモン注射を繰り返した胸は膨らみ、腰も女性らしく丸みを帯びる。背中が大きく開いた服に腕を通すと、つやっぽい大人の女性だ。さきほどまでのあどけなさはもうなかった。
デポックの高齢者施設には普段から、幅広い年齢層が集まる。ケーキ作りを習いに来る高齢者から、売春の最中トラブルに遭い、泣きついてくる若者。年代は違えど共通するのは皆、体は男性だが、心は女性ということ。
「Sayonara, sayonara〜」。施設に集まったトランスジェンダーたちはカメラの前でインドネシアの童謡「サヨナラ」を歌っていた。ユユン・マリニさん(64)は「たくさんの友人がそばにいる。寂しさとはおさらばよ」と笑っていた。(上松亮介、写真も)
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