インド洋の緑の谷へ 西ジャワの港町 パンガンダラン

 2006年に500人を超える死者・行方不明者を出したチラチャップ沖地震・津波の被災地西ジャワ州チアミス県パンガンダラン。被災以前のにぎわいを取り戻そうと、自然あふれる地形を生かし、透き通る海でのダイビングやきれいな緑色の川を利用したレジャーと自然公園を合わせた観光地の整備が進む。ジャカルタからバスに揺られること10時間。インド洋に面する港町に到着した。(西ジャワ州パンガンダランで高橋佳久、写真も)

■洞窟と飛び込み
 パンガンダラン中心部からオジェック(バイクタクシー)で約30分。魚の養殖場が並ぶのどかな田園風景を通り過ぎると、ヤシの木が並ぶチトゥマン村に入る。村に沿って流れる川で住民らが水浴びをしている。案内してくれた地元住民のヤントさんは「水がきれいな証拠」と誇らしげ。
 村の駐車場にオートバイを止め、徒歩で山道を歩くこと5分。脇には小さな棚田があり、農業体験のワークショップも予定しているという。途中から舗装された道に入り、緑色に輝く清流に到着する。西ジャワ州が新しく観光地として整備を進める「グリーンバレー」だ。
 レジャーは洞窟と飛び込みスポットの二つだ。川に入り、入り口から右に進むと、洞窟があり、中へ泳いで進んでいく。洞窟の奥に一カ所だけ光が差し込んでいるのが見える。緑色の水に揺られながら光に照らされると、とても心地いい。
 飛び込みポイントの高さは約5メートル。子どもたちが勢い良く飛び込んだり、滝を滑り落ちたりと楽しむ一方、大人たちはなかなか飛び込む勇気がでない様子だった。
 グリーンバレーは来年1月、正式にオープンする予定。砂糖や銀細工を作ったり、木材から紙を作るなど、チトゥマン村で体験できるプログラムを計画し、観光客を誘致するという。

■「日本軍の洞窟」も
 パンガンダランでは、ジャワ島からインド洋に突き出た小さな半島全体が自然公園として整備されている。さまざまな種類の木々が生い茂り、野鳥のけたたましい鳴き声や樹上から真っ黒なサルが観光客を見つめている。
 鍾乳洞が点在し、懐中電灯を当てると鉱物がきらきらと光を反射する。足元の岩陰にヤマアラシの親子が隠れているのが見え、真っ暗な天井にはコウモリが群がる。
 園内には日本軍がインドネシアに侵攻した際に作ったとされる洞窟「ゴア・ジュパン」もある。多くの洞窟が樹木の根に絡まりながら口を開けている。
 自然公園を2時間ほど歩くと、小高い丘の上の木々がない野原に出る。ヤントさんは「昔はバッファローの群れがいたけど、津波で皆いなくなってしまった」と話す。それでも野生のサルやシカなどが生息し、ラフレシアなどの花も咲く。現在は丘にチークなどの樹木を植え、プランテーションにする計画があるそうだ。
 自然公園の入場料は7000ルピア。開園時間は午前6時ー午後5時。

■ウミガメの施設へ
 パンガンダランでは、船に乗って川下りを行う「グリーンキャニオン」も人気だ。海岸沿いではウミガメの保護を行っており、ウミガメを観察することもできる。海沿いという地形を生かして、スキューバダイビングやサーフィンなどのレジャーも盛ん。夜には魚市場がにぎわい、新鮮な魚介類を楽しめる。
 津波被害の痕跡は現在も各地に見られる。海岸沿いには建物の基礎部分のみが並ぶ。飲食店を経営するアンドラさんは「少しずつだけど良くなってきている。前よりももっといい生活にするために頑張るよ」と明るく笑い飛ばした。

◇バンドンから5時間
 パンガンダランまではバンドンから車で約5時間半。東ジャカルタ・カンプンランブータンやバンドンから直通バスもある。ジャカルタのスネン駅からは列車で約9時間。バンジャル駅で下車、バスに乗り換え約2時間半の道のりだ。

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