【じゃらんじゃらん特集】 「釣って食べるのが日課」 ジャカルタ中心部の穴場
「釣りが好きでやめられない」「釣ったら食べる」。ジャカルタにも毎日釣りをせずにはいられない無類の釣り好きがいる。都会の真ん中の「釣りきち」たちが集う場所を訪れた。
■元建設現場の池
高層ビルが立ち並ぶ南ジャカルタ・クニンガン、アライアンス・タワーとカンプンに挟まれた場所に150メートル四方ほどの巨大な池がある。池は廃墟と化したコンクリートの建物を囲むようにしてあり、ごみが散乱し、足場は悪い。しかし大物を狙える「穴場」で玄人が集まる。
工場で働くリアンさん(20)は投げ釣り専門だ。ルアーをつけずにおもりと複数の針だけ釣り糸につけ、魚を引っかけて釣る戦法。餌や疑似餌を使わず、「1日3匹の釣果は堅い」と話す。これまで約2キロの大物も釣り上げたこともあるという。
運転手のウィー・ユーさん(22)はエビを餌に浮き釣りで勝負する「正当派」だ。「ここに通って釣りをするのが日課で毎日釣った魚を焼いて食べる」という。
ウィーさんによると、ここは1990年代にビルの建設が始まったが98年に地下から水が湧き出て中止になった。現れた池に誰かが魚を放し、2000年ごろから多くの魚が生息するようになった。ナマズやライギョ、ティラピアが釣れるという。
廃墟の陰の池から規則的に顔を出す鉄骨がむき出しになったコンクリートなど、大物が潜むポイントを釣り人たちは重点的に狙う。すぐ横に立つ近代的なビルの横の社会から取り残された建設現場で勝負師たちと大魚の、駆け引きが毎日繰り広げられている。
■官製の「釣り堀」
中央ジャカルタ・メンテンにあるシトゥ・レンバン公園は、家族やカップルで釣りを楽しむ場になっている。人口池が一周歩いて5分ほどの公園面積の半分以上を占める。
ジャカルタ特別州による釣り大会が開催されるなど、州も魚を放し、繁殖させたこともある。釣り好きにとっては官製の「釣り堀」だ。
多くの釣り人が10センチにも満たない「小物」を釣りあげる中、10ー20センチ級の魚をびくにため込むのはウコン・ウディンさん(65)。10歳から同公園で釣りをしてきた大ベテランだ。建設現場での労働を引退した後はほぼ毎日釣り糸を垂らしている。「釣れた魚は必ず持ち帰って近所に配る」と「キャッチアンドイート」を徹底してきた。周囲は釣りに飽きた子どもが木陰を走り回り、ベンチに座ったカップルがその光景を眺める。
芝生も整備された公園は気軽に、快適に都心で釣りを楽しめる貴重な場所であるようだ。(堀之内健史、写真も)