受刑者は「仮出所」 地震で塀崩壊パルの刑務所 きょう再収監へ
中部スラウェシ地震の際に塀が崩れ「受刑者が脱走した」と報道されたパル2A級刑務所の複数の当局者が15日までに、じゃかるた新聞に対し「実際には被災家族らを支援させるため、一時的に全ての受刑者らに対し仮出所措置を取った」と説明した。自宅などに帰った受刑者には居場所を毎日申告することを義務づけているとし、16日朝までに出頭させ、再収監することを明らかにした。
同刑務所で受刑者・勾留者データの管理に当たるマルフ氏らによると、同刑務所はパル市にある中部スラウェシ州最大の刑務所で、9月28日の地震発生当時、麻薬関係、殺人、窃盗、強姦などの罪が確定した終身刑から禁錮8月までの受刑者ら558人が収監されていた。大半が地元民だが、地元に在住していたマレーシア人2人と韓国人、フィリピン人、タイ人各1人も含まれていた。
地震では、刑務所の北西、北東、南東の高さ6メートルの壁が崩壊、受刑者がパニックに陥り、一部が脱走した。刑務所は、施設の安全性が確認できない▽受刑者に食事を提供できない▽受刑者の多くがパル市海岸部などの被災家庭の世帯主で、被災者の支援に当たる必要がある——などの理由から、仮出所させることを決定。所内のサッカー場に集めた受刑者らに通告した。
ほかに、州内の五つの刑務所でも同様の措置を取った。
2A級刑務所のアリフ警備部長(54)によると、15日夕までに200人弱が戻っており、16日朝までに出頭しなかった者は17日付で指名手配する方針だ。
マルフ氏は「妻が受け入れを拒んだ場合は、両親や親戚の家に滞在させるなどのケアを毎日行った。ボランティア活動に従事していた者もいる。出所した受刑者が犯罪に及んだとの報道についてチェックしたが、事実ではない」と語った。
同刑務所に戻ってきた受刑者(28)は殺人罪で刑期を約15年残している。「そのまま逃げようとは思わなかった。戻るのは義務だからだ。仮出所中は親戚の家で子どもたちの面倒をみていた」と話した。(米元文秋、写真も)