大統領令を政治問題化 「外国人労働者が大量流入」

 ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領が3月に発令した外国人労働者に関する大統領令が政治問題化されている。野党は国内労働者より外国人を重視し、大量流入させていると政府批判を展開、来年の大統領選に向け攻勢を強めている。一方、国家機関の監視機関オンブズマンは26日、不法就労の外国人が増えているとする調査結果を発表。労働省や入管だけでなく、警察も加わり、外国人管理における関係機関の連携強化が不可欠との見解を示した。

 大統領令では、外国人雇用計画書(RPTKA)を就労許可として一本化するなど、手続きの簡素化を図ることで外国人労働者の受け入れ体制改善をアピールした。
 ジョコウィ大統領は25日、三菱自動車の「エクスパンダー」輸出開始式典で、「外国人労働者が大量に流入していると話題になっているが、政府は行政手続きを簡素化しようとしているだけ」と言及、「この問題が政治問題になっている」との見方を示した。
 プラモノ・アヌン内閣官房長官は「政治の年に特定勢力がこの問題をたきつけようとしている」と野党勢力をけん制。ハニフ・ダキリ労働相は「外国人労働者は昨年末で8万5974人にすぎない。他国と比べ外国人労働者の比率は0.9%と非常に低く、タイの1.7%、シンガポールの1.4%を下回っている」と対応に追われている。
 これに対し、最大野党グリンドラ党のファドリ・ゾン国会副議長は「たきつけているわけではなく、大統領令に反対しているだけ。大統領は政治を学ぶべきだ」と攻勢を強めている。

■「運転手は中国人」
 大統領令について、オンブズマンのラオデ・イダ代表は26日、労働省や法務人権省出入国管理総局、投資調整庁(BKPM)、国家警察の高官と会見を開き、外国人管理に関するデータが各機関の間で共有されておらず、大統領令を執行するためには連携強化が不可欠だとの見解を表明した。
 オンブズマンが2014〜17年6月に9州で実施した調査の結果、労働省が発表する外国人労働者数はあくまで就労許可取得者で、地方には外国人労働者全体の9割を占める非熟練労働者が大量流入している実態が判明したと指摘。特に中国人の非熟練労働者を挙げ、西パプア州マノクワリのセメント工場ではほぼ100%が中国人で、運転手だけで200人が雇用されていたと説明した。
 また東ジャワ州グレシック県で操業する中国系企業6社を名指しし、就労許可失効後も外国人を雇用していると指摘。母国で給与を支払うなど税逃れの事例も多数発覚したと明かした。
 他には、就労許可を得て2年後にインドネシア国籍を取得した韓国人が16人いると指摘。企業や個人名は伏せたが、就労目的で国籍を取得した疑いがあるとした。会見で日本人・日本企業への言及はなかった。
 今後は労働省、法務人権省、警察、BKPM、地方自治体がそれぞれ外国人労働者のデータを共有し、警察も不法就労摘発に積極的に参加する方向で調整を進めているという。(配島克彦)

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