廃水垂れ流し、2色の川 チタルム川上流域 バンドン県
汚染が長年問題視され、ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領が7年がかりの浄化に着手した西ジャワ州のチタルム川。全長269キロの同川はジャカルタ特別州民の貴重な水源でもあるが、工場廃水や生活排水、生活ごみなど、複数の汚染原因が絡み合う。28日、上流域のバンドン県を訪れた。
バンドン市中心部からオートバイで約1時間半。バンドン県マジャラヤ地区には繊維産業を中心に小規模工場が集積する。この地区を蛇行するチタルム川には上流の森林伐採で流出した土砂などが混ざり、水は黄土色だ。とある工場裏手をのぞくと、排水口から黒ずんだ水が流れ込み、川は2色に分かれていた。
排水口には、環境団体グリーンピースが2012年に設置した「注意:危険な廃水がここから出ています」という看板が。同団体の水質調査では、この場所から染色などに使う化学物質が検出されている。「複数の工場の廃水や廃液が混ざっているんだ」。案内してくれた州環境局のダニ・リドワンさんが黒い水を指さした。
各工場の廃水は地下のパイプを伝い、遠く離れた場所にはき出されるため、出どころを特定するのは困難。この地区には古く小さな工場が集まり、そもそも操業許可がない工場もあるという。通り沿いには工場らしき建物が立ち並ぶが、そのほとんどは重厚な門が閉ざされ、表に看板などもないため、一見しただけでは何の工場か分からなかった。
訪れたのは正午ごろだが「真夜中になればもっと黒い水が出る」とダニさんは眉をひそめる。工場が行政や報道の目を盗んで廃水を流すため、州は県市や軍と協力し夜中の抜き打ち調査を敢行しているという。未処理の廃水を流したとして、これまでに行政側が工場閉鎖に踏み切ったり、裁判所に提訴したりしたケースも。大統領の指示の下、こういった動きが加速する可能性もある。
だが道のりは長い。工場廃水を規制する法令や大臣令はあるものの、実際に基準を満たす廃水処理設備を持つ工場はまだ全体の1割に過ぎないと考えられている。(木村綾、写真も)