女性と釣り針を埋葬 世界最古、1万2000年前 アロール島で発見
東ヌサトゥンガラ州アロール島で、女性と釣り針が共に埋葬された世界最古の化石が発見された。推定年代は約1万2千年前(更新世後期)で、アロール島で当時、生活の糧となっていた漁業に女性が重要な役割をしていたことが示された。さらに、人の生死が海とつながっていると信じていたことから、死後の世界へ行く際に釣り針を埋葬したと考えられている。
オーストラリア国立大学(ANU)の教授で、考古学者のスーザン・オコナー氏の調査チームが、アロール島の南海岸にある岩場トロン・ボン・レイで2014年6月に発掘した。17年12月に研究内容が発表された。
貝殻から作られた5本の釣り針と磨かれた貝殻が、成人女性の頭蓋骨のあご横に置かれた状態で発見された。副葬品としての釣り針は、世界最古となる。
トロン・ボン・レイは海面から高さ約33メートル、内陸約130メートル地点にある。
化石は深さ約2メートル地点から出土した。頭蓋骨のほかに、頚椎や肋骨、肩甲骨、左腕の上腕骨の一部なども見つかっている。
インドネシアではこれまで、数千年以上前に漁業を担っていたのは男性だと考えられてきたが、今回の発見で女性も漁業に従事し、重要な役割を果たしていたことが示された。
調査チームによると、トロン・ボン・レイで見つかった生物の骨の約96%が、魚や甲殻類などの魚介類だったことから、魚は貴重なタンパク源だったと考えられている。
オコナー教授は「アロール島の人々にとって、釣り針は毎日を生きるために欠かせない道具で、死後の世界でも重要なものと位置づけられた。また(化石として見つかった)女性は高い地位を持つ漁師の1人で、釣り針と共に尊敬の意を込めて他の仲間たちから埋葬された」と説明する。
これまでに釣り針が埋葬された世界最古の例は、シベリアのエルシ墓地で見つかった化石で、約9千年前のものだという。最も古い釣り針は、日本や東ティモールなどで約2万3千年以上前のものが発見されているが、いずれも埋葬されていなかった。
アロール島で発見された5本の釣り針のうち、4本は丸みを帯びた回転フック型で、残りの1本は欠けたJフック型の釣り針と見られている。回転フックは沖縄で見つかった世界最古の釣り針だけでなく、オーストラリアやメキシコなど世界各地の沿岸部地域でも見つかっているという。
オコナー教授は、アロール島が他の大陸から孤立していることなどを踏まえ、「(回転フック型の釣り針は)人の移動を通じて広がったのではなく、効率的に漁ができる釣り針として同じ形状のものが個別に発明された可能性が高い」と説明している。
今回は化石の一部しか発掘できなかったため、18〜19年に化石の発掘と研究を続け、アロール島での埋葬についてより詳しい論文を発表する予定。(毛利春香)