NGOで有機食品販売 ハウス食品松浦さん 留職で課題に挑戦
インドネシアの非政府組織(NGO)で有機(オーガニック)食品販売に奮闘している日本人がいる。
南ジャカルタのクマンに事務所をおくNGOジャバラ・インターナショナルで働く松浦寛充さん(28)はハウス食品の社員。NPOクロスフィールズ(本部・東京都品川区)の「留職プログラム」を利用して、インドネシアを訪れた。
ジャバラが展開するビジネスは提携する国内約5万2千の農家から有機栽培の農作物を買い取り、加工して販売する。バリ島原産の塩やココナツオイル、コメ、果物など扱う商品は620種類。配車アプリのゴジェックを使って注文することもできる。
バリにも拠点があり、従業員は約70人で年間の売り上げ規模は約2億2千万円。
松浦さんはプログラムに参加する理由を「日本国内での営業活動の中で、社会貢献をしつつ学んでいきたいと思った」と語る。そのなかで人材育成とともにインドネシアへの理解、貢献を目指すハウス食品と、日本市場を開拓したいというジャバラのニーズが一致した。「ハウス食品のスパイスのノウハウなど貢献することができるのではないか」と感じたという。
ジャバラの製品売り上げでは輸出が6割を占め、イタリアなどヨーロッパ20カ国に販売している。
松浦さんのミッションは代理店を増やすなど、現在の取扱量が少ない日本市場への輸出振興および、国内の邦人コミュニティーの間での認知度向上だ。「検疫検査などハードルが高い日本への輸出を軌道に乗せ、韓国や中国にも販売できる体制の基礎を作りたい」と抱負を語る。
日本食スーパー「パパイヤ」で販売するのみでなく、料理教室やサンバル作りのワークショップなどを通して在留邦人に知ってもらう。日本料理店にも試してもらい、販売につなげたい考えだ。
最近、特に販売拡大を目指しているのはアミノ酸や鉄分、ビタミンを豊富に含み、健康食品として注目を浴びているモリンガ(ワサビノキ)。100グラムで6万ルピア程度で、日本国内と比較して販売価格はおおむね半額以下だ。「モリンガを扱ってくれる日本の代理店はまだ少なく、通販などで販売したい」と話す。
取り組む課題は多い。コーヒー豆の販売は専門メーカーとの価格面での競合で新規取り扱いをやめている。価格と品質両面を維持しながら、売れる商品を市場に出すのは難しい。
「ハラル認証を足がかりに、国内やイスラム圏での販売を広げたい」「農家の人の顔や原産地が伝わるように、パッケージを工夫した方が良いのでは」。挑戦は続く。
「(プロジェクト期間の)半年間で、なんとか成果を出したい」と松浦さんは笑った。
留職 クロスフィールズが展開するプログラム。日本企業が新興国の企業やNGOに社員を数カ月から1年ほど派遣し、社会課題の現場に貢献しながら技術や文化を習得させることを目指す取り組み。現在までに30社以上が利用し、127人が10カ国へ行っている。若手社員のリーダーシップ育成に効果があるとして注目を浴びており、活用する企業も増えている。インドネシアにはこれまでテルモや日立製作所などの企業、団体から最多の40人が参加している。(平野慧、写真も)