モスクで天体ショー 西ジャワ州バンドン県レンバン 天文学者が自宅に建設
西ジャワ州西バンドン県レンバン郡ワングナサリ地区アルン村でこのほど、プラネタリウムを楽しむことができるモスク「ムショラトリウム」がオープンした。天文学者のヘンドロ・ストヤントさん(43)が自宅の敷地内に建設。「モスクに来たついでに、プラネタリウムを通じて天体に興味を持ったり、学んだりしてほしい」と話している。
ヘンドロさんはバンドン工科大学(ITB)天文学科を卒業し、ボッシュ天文台で働くなどしてきた。現在は、国内にあるプラネタリウム5カ所のアドバイザーとしても活躍している。
最大40人を収容できるモスクは直径6メートルのドーム型で、2015年に建設が始まった。建設費約6億ルピアは、インドネシア国立航空宇宙研究所(LAPAN)や宗教省、宗教団体や天文学関係者からの寄付金などを充てた。
白と金色の三角形が組み合わさってできたモスクは、山間の住宅地の中で、ひときわ目立つ。内部は薄暗いが、プラネタリウムの投影が始まると外とは別世界が広がる。星や太陽系、宇宙の成り立ちなどがモスクいっぱいに映し出される。座ったり寝転がったりしながら見ていた子どもたちは、星が降ったり、鮮やかな天体が現れたりするたびに声を上げた。
「モスク内で偉大な宇宙に触れることで、神の威厳についても感じることができる」と話すヘンドロさん。1日5回のお祈りの後に、プラネタリウムを投影するほか、子どもを中心に天体を学べるよういつでも投影する。また村の観光スポットの一つとしても、活用していきたいという。
現在は無料で公開したいとしているが維持費のため、寄付金を募ることも考えている。
■天文学研究の地
バンドン市内の高地に位置するレンバンでは、オランダ統治時代から天文学の研究が進んでいた。1928年完成でインドネシア最古のボッシュ天文台があり、今回完成したムショラトリウムからも近い。
ヘンドロさんは天体観測などを個人で実施していた自宅を、2012年に誰でも天体を学べる場所として開放。地元スンダ語で「のぞく家」という意味の「イマ・ヌーン」と名づけ、学校訪問や天体好きのコミュニティー団体らが学ぶ場所として活用されてきた。
訪問者用の部屋には、天体に関する書物やスクリーンを設置。庭には天体望遠鏡があり観測も続ける。日曜の夜には子どもたちや学生らが集まり、天体観測を楽しんでいるという。
ヘンドロさんは「私が子どものころは天体に関する情報はほとんどなかった。今は趣味で天体を楽しむ若者が増えるなど関心が高まり、各地で観測用の設備も改善されてきている」と話した。(毛利春香、写真も)