ゲル状消火剤を実験 森林・泥炭火災対策 イルカカレッジと鳥大
鳥取発の技術がインドネシアの森林・泥炭火災問題に挑戦している。環境技術開発などを手がけるイルカカレッジ(本社・鳥取県米子市)は2日、東ジャカルタのキャンプ場で政府関係者を招き、模擬火災をゲル状の消火剤を使って消火する実演を実施した。消火、延焼防止能力をアピールし、ビジネス面を含めた実用化を目指す。
同事業は国際協力機構(JICA)が推進する「中小企業海外展開支援事業」の政府開発援助(ODA)案件化調査対象の一つに選ばれている。
ゲル消火材の開発は鳥取大学特認教授の松原雄平氏を研究代表として産学連携で進めた。2013年から森林火災対策の観点から日本の消防庁の委託を受けて、本格的に研究、開発してきた。
イルカカレッジの朝山規子社長は「2011年の東日本大震災後の原発事故で、ヘリコプターからの放水ではなかなか冷却させることができなかった。ゲル状にしたらさまざまな事故や火災に効果があるのではないか、と考えたのがきっかけ」と話す。
山林火災に当たり、高度のある航空機からの放水では、霧になってしまい風で流されて火災に届かないという問題がある。
開発した消火剤は粉末を透水性の小口の袋に詰め、使用時に水を加えてゲル化する。袋に詰められた粘性のあるゲルを使うことで確実に火災地点に投下できる。
朝山社長は「水を入れて飛んでいる間の5分間でゲル化する。乾燥状態で圧縮すれば場所も取らず、3年程度保存も可能で使用しやすい」と説明する。粉末にそのまま水を入れて地上で使うことも期待される。
また、風速や風向きなどのデータを分析し、火災時に消火剤をどこに投下すべきかを示す解析システムも開発。「1回落としたところを把握できるので、延焼しないために確実に落とすことができる」と話す。
保水性のあるゲル状消火剤は燃えていない場所に落ちても火の延焼を防ぐ。火災の進行を遅れさせることができるという。
同事業は15年にスマトラ島で起きた火災をきっかけに、在日インドネシア大使館の尽力もあり進めてきた。朝山社長は「インドネシアの森林、泥炭火災では数兆円規模の経済的な損失が生まれている。環境破壊、ヘイズの問題を抑止したいという政府のニーズと研究内容が一致した」と語った。今後普及実証事業に進め、本格的な導入を目指す。(平野慧、写真も)