「スマトラ新聞」を復刻 日本占領下の邦字紙 国立図書館に所蔵

 スマトラ島パダンで日本占領下の1943〜45年ごろに発行された日本語新聞「スマトラ新聞」の復刻版が、ゆまに書房から発刊された。同新聞はインドネシアの国立図書館に保管され、これまで多くの人の目に触れる機会がなかった。復刻版づくりを監修した民間研究者の江澤誠さん(67)は「スマトラの歴史はもちろん、インドネシアの他の地域の歴史研究にも役立ててもらいたい」と話している。

 日本占領下の東南アジアでは日本軍の「新聞政策要領」に基づき、日本の新聞社・通信社が日本語新聞を出していた。スマトラ新聞は、同盟通信社(現在の共同通信、時事通信)などがシンガポールで設立した「昭南新聞会」が発行した。
 ほぼ同時期に朝日新聞社がジャワ島で発行した「ジャワ新聞」が復刻されているのに対し、スマトラ新聞は日本の国会図書館や横浜市の日本新聞博物館にも所蔵がなく、ごく一部の研究者らの目に触れるだけだった。
 復刻版はA3サイズ。国立図書館に所蔵されていた1943年10月1日〜44年1月20日の94号分と日本で個人が所蔵していた1号分の計95号分を収録した。
 復刻版を監修したのは、戦争捕虜について調査する市民団体「POW研究会」に所属する江澤さん。日本軍政下で建設を進めたスマトラ横断鉄道について調査していたのがきっかけだった。
 江澤さんは横断鉄道の資料探しの過程でスマトラ新聞のことを聞き、中国文学者の鈴木正夫さんが国立図書館で見たという情報をもとに2016年2月、同図書館へ。スマトラ新聞約4カ月分が保管されているのが見つかったが、破れたり、紙が茶色く風化したりと保存状態は良いとは言えない。鈴木さんの勧めもあり、復刻版づくりに取り組むことにしたという。(木村綾、写真も)

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