衛星技術を共用活用 マルチGNSSアジア会議
各国のグローバル測位衛星システム(GNSS)の複合活用で精度を向上するなど衛星活用技術の発展に向けた、アジアのインフラ構築やシステム開発、実証実験などを議論するマルチGNSSアジア(MGA)会議が9〜11日、中央ジャカルタのアヤナ・ミッドプラザで開かれ、日本を含め約20の国と地域から200人が参加した。
現在、米国の衛星利用測位システム(GPS)や日本のみちびき、欧州のガリレオ、ロシアのグロナス、中国の北斗、インドのナビックなどを中心に、世界中で100以上の測位衛星が飛び交う。特に、アジア・太平洋地域は約8割が航行するショーケースと言われ、共同活用、共同運用の実証実験に最も適する地域とされている。
開会式では、MGAのタ・ハイ・トゥング共同議長やインドネシア国立航空宇宙研究所(LAPAN)のトーマス・ジャマルディン所長らがあいさつ、国土地理院(BIG)のハサヌディン・アビディン長官が基調講演を行った。
プログラムでは、欧州、米国、日本、中国の各政府担当者によるGNSSの最新状況が説明され、その後、農業、防災、自動車、観光など各分野の産業利用とその応用として、最新技術の紹介や情報共有が行われた。会場横では、日本を含む19の大学や企業がブースを出展、独自の技術や活用例を紹介した。
MGAは、国連宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)によって設立されたGNSSに関する国際委員会(ICG)の認証機関で、2011年に東京で設立。10年にタイで開催された事前会議を含め今回で9回目となる。現在、世界20カ国・地域の政府機関や企業、教育機関などが参加している。
事務局を務める宇宙航空研究開発機構(JAXA)の佐藤一敏主任研究開発員は「自動運転技術の確立や実用化など、GNSS共同運用のメリットはビジネスチャンスに繋がる。インドネシアを含む東南アジアは、経済規模、人口規模から見てもポテンシャルの大きなマーケット。産業主導の実証実験など前向きな議論が行われた」と語った。
■新興国で低コスト技術
レセプションでは、ヨーロピアン・サテライト・ナビゲーション・コンペティションとGNSSアジア・プロジェクトとの協力で、アジアにおけるGNSSの実用的なアイデアやその普及に貢献したシステム開発に贈られる「ガリレオ・マスター2017・GNSSアジア・チャレンジ賞」の表彰式が行われ、58の応募アイデアの中から、警察庁科学警察研究所の特任研究官、原田豊さん(61)が発表した「聞き書きマップ」が2位を受賞した。
同プログラムは、地域に生きる人々が育んできた情報、知識、知恵を含む「地域の知」を効率よく掘り起こし、地理空間データとして記録するもので、通学路の安全点検マップの作成などに活用されている。
原田さんは「ランニングコストを限りなくゼロに近づけ、誰にでも扱いやすいようにシンプルな機能と操作に絞った。コストをあまりかけられない新興国の自治体や緊急災害時の現地実態調査などに活用してほしい」と話した。(太田勉、写真も)