アグン山で避難勧告 8万人、噴火警戒 バリ島
バリ島カランアセム県の霊峰アグン山(3031メートル)の火山活動が活発化していることを受け、火山地質災害対策局(PVMBG)は18日午後9時(現地時間)、噴火警戒レベルを上から2番目の「シアガ(警戒)」に引き上げた。周辺住民に対し避難を勧告している。
国家防災庁(BNPB)によれば、アグン山が噴火した場合、火砕流や土石流などが達する危険がある地域には約8万人が住んでいる。火山ハザードマップを公開し、注意を呼びかけている。
PVMBGは登山客らに対し、火口から半径6キロ以内、標高950メートル地点へ入山しないよう勧告。さらに火口から北、南東、南〜南西側各7.5キロの住民に避難を勧めている。
これを受け、南西側山麓のレンダン郡など、カランアセム県内の計350世帯が一時避難したが、19日夜までに自宅に戻った。
周辺自治体は10月1日までの2週間、警戒態勢を引き上げる。カランアセム県に隣接するクルンクン県の災害対策局(BPBD)は噴火に備え、避難所2カ所を用意している。
レンダン郡の観測所では、18〜19日の24時間で366回の火山性地震を観測。同観測所にいるバリ州BPBDの担当者によると、噴火は起きておらず、火口からの噴煙は目視では確認できなかったという。
同山の噴火警戒レベルは14日、「ノーマル(通常)」から上から3番目の「ワスパダ(注意)」に引き上げられたばかりだった。
インターネットではアグン山が噴火し、火山灰が降っているとの情報も出回ったが、BNPBのストポ・ヌグロホ報道官は「アグン山の煙は森林火災によるもので、山はまだ噴火していない」と否定。「落ち着いて、デマ情報に惑わされないように」と呼びかけている。
バリ島最高峰のアグン山はバリ・ヒンドゥーの聖地として知られ、山ろくには総本山のブサキ寺院がある。ヒンドゥー教徒だけでなく、外国人観光客も訪れる観光名所になっている。
地元メディアによると、同寺院には19日現在も観光客らが訪れており、通常通り開放している。
アグン山が最後に噴火したのは1963年3月12日。8〜10キロの噴煙が上がり、火砕流が山麓の村落を飲み込み、1100人が死亡する大惨事となった。この噴火で住居が破壊された被災者がスマトラ島やスラウェシ島へ多数移住した。
バリ州のマデ・マンク・パスティカ知事は地元メディアに対し、63年に実家のあるブレレン県で被災後、スマトラ島ブンクル州へ移住した小学生当時の経験を説明。「パニックになる必要はないが、警戒を怠らないように」と呼びかけ、軍警察や各機関は出動準備を整えていると話した。(木村綾)