各地で犠牲祭祝う 多様性尊重、分断回避を 大統領はスカブミへ
ムスリムにとって最も重要な伝統行事の一つ犠牲祭(イドゥル・アドハ)を迎えた1日、インドネシア全国各地のムスリムが盛大に祝った。31日夜から「アッラーフ・アクバル(神は偉大なり)」の声が響き始め、1日には牛やヤギを解体、低所得者らに肉を配布する喜捨を行った。ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領は西ジャワ州スカブミ市、ユスフ・カラ副大統領は中央ジャカルタのイスティクラル・モスクで、それぞれ犠牲祭を祝った。
ジョコウィ大統領は1日、イリアナ夫人と共にスカブミ市内の競技場「ラパンガン・ムルデカ」で、地元の住民らと共に祈りをささげた。犠牲祭をスカブミで祝った大統領はスカルノ初代大統領以来2人目で、65年ぶりだという。
ジョコウィ大統領は「インドネシアには1万7千の島に34州516県があり、714の民族、1千を超える言葉がある」と国内の多様性の素晴らしさを強調。一方で、「政治課題は市民を分断するものではない。選挙は社会を壊すものではない」と話し、ジャカルタ特別州知事選など地方首長選挙で、宗教や民族などの違いをめぐり市民が対立することがないよう呼びかけた。
アフマッド・ヘルヤワン西ジャワ州知事やブディ・カルヤ・スマディ運輸相、ムハジル・エフェンディ教育文化相らも出席した。
大統領は同市にある大モスクに1.4トンの牛、34州各地にも牛を寄付した。ジャカルタでは、大統領が州知事時代に建設事業に着手し、ことし4月に西ジャカルタ区カリデレスに完成した州営モスク「ハシム・アシャリ・モスク」などへ牛を寄付した。同モスクでは1袋2キロの肉が計1千袋、地元の住民らに配られたという。
一方、カラ副大統領は1日、ジャカルタのジャロット知事やルクマン・ハキム宗教相らと共にイスティクラル・モスクで祈り、1.3トンの牛を寄付した。
1日は金曜礼拝と重なったため、通常は早朝から始められる解体作業を、礼拝後や2日に実施するモスクもあった。(毛利春香、8面に関連)
◇ 犠牲祭(イドゥル・アドハ)預言者イブラヒムが、最愛の息子イスマイルを犠牲にし、神への忠誠を示そうとしたコーランの逸話に基づくイスラムの慣習で、ムスリムにとって最も重要な行事の一つ。信仰心を高めることを目的とし、犠牲に捧げた肉は貧しい人々に振る舞う(喜捨)ことが義務となっている。イスラムの暦「ヒジュラ暦」でメッカ巡礼のピークの翌日となる巡礼月の10〜4日間続く。