ブカシ鉄道の拠点へ 南ジャカルタ・マンガライ駅 電化・日本式信号で整備
国鉄(KAI)は、南ジャカルタのマンガライ駅を首都圏専用電車(KRL、コミューター)が発着する首都圏の中心駅とする計画を進めている。同駅〜西ジャワ州ブカシ県チカラン駅間では日系企業が既存線の電化、日本式信号システム導入、新駅の建設などを実施。複々線も建設し、首都圏広域の鉄道利用者増加を目指す。
マンガライ駅〜ブカシ駅はこれまで、国鉄子会社KAI・コミューター・ジャボデタベックが運営する首都圏のコミューターと、ジャワ各地とジャカルタを結ぶ長距離列車の二つが線路を共用してきた。複々線化で線路を分離することで、より効率的に運行できるようになる。
複々線の建設計画は、マンガライ駅〜ジャティヌガラ駅、ジャティヌガラ駅〜ブカシ駅、ブカシ駅〜チカラン駅間のそれぞれ三つに分けられており、いずれもインドネシア企業が担当している。
運輸省によると、工事の進捗(しんちょく)率はマンガライ駅〜ジャティヌガラ間で40%、ジャティヌガラ駅〜ブカシ駅間で36%。ブカシ駅〜チカラン駅は着工していない。同2駅間の線路沿いには、住宅や違法住居などが立ち並んでおり、土地収用が困難とみられている。
ブディ・カルヤ・スマディ運輸省は2018年の複々線完成を目指すとしている。現在、ジャワ島各地を結ぶ長距離列車が発着している駅は、中央ジャカルタ区ガンビル駅や南ジャカルタ区パサール・ミング駅などだが、複々線の完成後は、ガンビル駅からの長距離列車の発着をなくし、マンガライ駅を中心駅として活用する方針だ。
マンガライ駅はスカルノハッタ空港鉄道もつながり、18年の開通を予定している。
■5年間の事業完了へ
マンガライ駅〜ブカシ駅〜チカラン駅(約35キロ)間では、住友商事と三菱重工業が、既存線の電化▽インドネシアで初となる日本式信号の導入・置き換え▽線路の改良▽新駅の建設・改築――を進めてきた。円借款事業として12年に受注総額約210億円で契約。8月中に工事を終える予定。
日本式の信号システムを導入し、鉄道の信号システムなどを手がけるレン・レールウェイ・システムズに技術を移転。既設の欧州式システムは使用できるが装置内部やシステムなどが不明でブラックボックス化されており、維持・補修などが困難になっていた。
日本式信号では、インドネシアが独自に路線変更時にシステムを調整して改変できるようになったほか、メンテナンスや部品交換も可能になった。今後は首都圏の他の路線でも同システムが導入される可能性も高まったという。(毛利春香、写真も)