強硬派団体を解散 政府 民主化時代で初

 法務人権省は19日、国家5原則パンチャシラに反したとして、イスラム強硬派団体のヒズブット・タフリル・インドネシア(HTI)を解散させたと発表した。政府による大衆団体の非合法化は、スハルト長期独裁政権が崩壊した1998年以降の民主化時代で初めて。

 法務人権省のフレディー・ハリス法務総局長が会見し、19日付けでHTIの法的な団体認定を取り消すと共に、大衆団体に関する新政令に基づいてHTIの解散を決定したと明らかにした。「パンチャシラをイデオロギーとして掲げているが、実際には、HTIの活動の多くがパンチャシラや統一国家インドネシアの精神に反している」と解散理由を説明した。
 ヒズブット・タフリルはイスラム国家樹立を掲げる国際イスラム団体で、80年代にインドネシア国内で活動を開始。内務省は2006年6月、法務人権省は14年7月にHTIを大衆団体として認定していた。
 イスラム国家樹立やシャリア(イスラム法)の全国適用を主張し、反米デモやミスコン、バレンタインデー廃止などを訴える集会を各地で展開。コーラン侮辱発言で実刑判決を受けた、キリスト教徒のアホック前ジャカルタ特別州知事への抗議運動にも加わった。
 政府は5月、「唯一神への信仰」や「インドネシアの統一」を定めたパンチャシラに反するとして、HTIの解散を勧告。6月にはパンチャシラの維持・促進をサポートする大統領直轄の「パンチャシラ・イデオロギー室」を新設、7月10日には裁判を経ず、政府による団体の解散を認めた新政令にジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領が署名するなど、不寛容行為の取り締まりに力を入れている。
 フレディー氏は、政府は結社や表現の自由を保障するが、団体の活動は「特にインドネシアのイデオロギーと憲法に反してはいけない」とし、「行政の条件に合わない団体は、法務人権省が法的に認めない」と強調した。

■行政裁に提訴へ

 政府による解散発表を受けHTIの弁護士、ユスリル・イフザ・マヘンドラ元法務人権相は19日、行政裁判所に提訴する考えを明らかにした。
 ユスリル氏は新政令について「公正な法手続なしに、政府が一方的に大衆団体を解散できる権限を与えられている」と指摘し、「政府に対して立場が弱いことは分かっているが、諦めるわけにはいかない」と対抗する構えを見せている。
 新政令は現在、国会で審議中。HTIや一部のイスラム団体らは不成立を目指し、国会議員へのロビー活動や抗議運動に取り組んでいる。(木村綾)

ヒズブット・タフリル
 
 カリフ(預言者ムハンマドの後継者)を頂点とするイスラム国家樹立を唱える国際組織。「解放党」を意味する。インドネシアでは2002年、中央ジャカルタ・スナヤンのブンカルノ競技場で数万人が出席する大集会を開催。大学などを拠点に支持層を拡大し、全国330県・市に支部があり、信者は約100万人としている。近年はイスラム擁護戦線(FPI)など他の強硬派団体と連携し、反米、パレスチナ擁護デモなどを展開してきた。

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