中国発の自転車シェア アンチョールで試験導入 乗り捨て可能 スマホで手軽に

 スマートフォンのアプリを使った中国発の「自転車シェアサービス」が6月、北ジャカルタのアンチョール公園で試験的に始まった。駐輪場所に返却する必要がなく、乗り捨てられる便利さが売り。配車アプリの普及を背景に、新たなシェアビジネスの試みが始まっている。
 レバラン(断食月明け大祭)休暇中の6月30日、行楽客でにぎわうアンチョール公園のあちこちで、黄緑色の自転車に乗る人たちがいた。西ジャワ州ブカシから来た会社員、デフィさん(24)は「いつもは海辺を散歩していた。きょうはサイクリングができてうれしい」と満足げ。乗っているのは「Ourbike(アワーバイク)」が提供するシェア自転車だ。
 使うには、スマホに専用アプリをダウンロードし、携帯電話番号を登録する。園内に止めてある各自転車にはナンバープレートが付いていて、この数字をアプリに入力すれば鍵を解除できる。目的地に着いたら鍵をかけ、「終了」ボタンを押してスマホで決済する。
 係員に声を掛けて借り、元の場所に返す従来のレンタル自転車とは異なり、近くにある自転車を自由に借りられ、園内であればどこで乗り捨てても良いという便利さが特徴だ。
 アンチョール公園は6月から、アワーバイクと提携して500台を試験的に無料で貸し出している。これまでは1時間2万5千ルピアのレンタル自転車があったが、利用者は限られていた。アワーバイクの利用は現在無料とあり、アプリのダウンロード数は開始から1カ月で1万以上と伸びている。
 実際に記者が1時間16分借りたところ、表示された料金は1万2千ルピア(暫定価格、現在は試験中で無料)と従来の半額以下だった。走行距離や消費カロリーも記録されるので、スポーツ目的にも良い。料金設定や決済方法を検討し、8月以降に本格導入したいという。
■中国で大流行
 アワーバイクは、ことし創業したばかりのベンチャー企業で、中国・北京に拠点を置く。最高経営責任者(CEO)の段旭さん(27)は中国の自転車シェア大手「Ofo(共享単車)」に2年間勤めた後に独立、同僚2人とジャカルタで事業を立ち上げた。
 Ofoは2014年に北京で創業。低価格と手軽さが支持され、自転車シェアは中国で大流行した。Ofoのライバル「Mobike(摩拝単車)」はシンガポールや英国にも進出、6月22日には福岡市で日本法人設立を発表するなど、海外に目を向け始めている。
 段さんは「中国の自転車シェアは日本市場に入ろうとしているが、(米配車アプリの)ウーバーが規制で苦戦していることからしても、参入は難しいと思う」と指摘する。
 一方、インドネシアではウーバーやグラブ、ゴジェックなど配車アプリが急速に浸透。渋滞するジャカルタの街を走る自転車は今は少ないが、「中国にも数年前まではシェア自転車がなかった。ジャカルタでもやっていける」と段さんは自信を見せる。今後は首都圏の大学キャンパスなどでも試験導入し、本格運用にこぎ着けたいと考えている。(木村綾、写真も)

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