控訴取り下げ アホック氏「国のため、全て許す」 コーラン侮辱裁判
コーランを侮辱したとして、宗教冒とく罪などに問われ、一審・北ジャカルタ地裁で実刑判決を受けたアホック・ジャカルタ特別州知事(50)が22日、控訴を取り下げた。支援者たちに宛てた手紙の中で「国のためならば、全てを許し、受け入れる」とその理由を語った。
アホック氏は昨年9月、住民の前で意図的にコーランに言及し、宗教を冒とくしたとして、9日に禁錮2年、即時収監の判決を言い渡された。禁錮1年、執行猶予2年の検察求刑を上回り、弁護側と検察側の双方が控訴した。23日時点で検察側は控訴を取り下げていないため、判決は未確定。
拘留中のアホック氏に代わり、控訴を取り下げた家族と弁護団ら6人は23日、中央ジャカルタ・メンテンで会見。アホック氏が「皆さんも、もちろん私も、このような現実を受け入れるのは簡単でないと分かっている。だが国のためならば、全てを許し、受け入れるということを私は学んだ」とつづった手紙を、妻のフェロニカ・タンさんが涙ながらに読み上げた。アホック氏の妹で、弁護団の1人として公判を戦ってきたフィフィ・レティー・インドラさんも隣で涙ぐんだ。
アホック氏への判決を受け、支援者による集会や抗議運動が各地で展開されている。同氏は手紙の中で秩序だった抗議運動を感謝すると共に憂慮した。「抗議運動の影響で、渋滞や経済損失が起きれば、ジャカルタの住民が損害を被る」「対立する勢力と衝突するのではないかと心配している」と述べ、これ以上デモをしないように促した。
北ジャカルタ地裁はアホック氏の収監を命じ、同氏は現在、西ジャワ州デポック市の国家警察機動隊本部に拘置されている。弁護団のワヤン・スディルタさんは会見で、「裁判官は(アホック氏が)収監されなければならない理由を説明していない」と主張、保釈や禁足措置への移行を求める考えを示した。
弁護側の控訴取り下げを受け、控訴中の検察側は「再検討する」と話している。(木村綾、写真も)