祖先はアフリカにいた 豪州専門家 ジャワ原人進化説を否定 フローレス原人
オーストラリア国立大学(ANU)は4月21日、小型原人「ホモ・フローレシエンシス(フローレス原人)」の祖先はアフリカにいたという説を発表した。フローレス原人が最初期のホモ属(ヒト属)とされているホモ・ハビリス(ハビリス原人)と姉妹種で、アフリカに共通の祖先を持っていた可能性が高く、これまで有力説の一つとされてきたジャワ原人(学名ホモ・エレクトス・エレクトス)が進化したという説を否定した。
研究では頭蓋骨やあご、歯、腕、足、肩の計133カ所を分析し、タンザニアで出土した175万年前と推定されているハビリス原人の化石のほか、同じヒト属であるホモ・エルガステル、ホモ・エレクトス、さらに猿人のアウストラロピテクス・アファレンシス、アウストラロピテクス・アフリカヌス、アウストラロピテクス・セディバなどと特性を比較し、系統樹を解析。フローレス原人がヒト属の進化系統樹のどこに位置するのかについて研究した。
調査チームでANUの人類考古学専門のデビー・アーギュー博士によると、フローレス原人とハビリス原人は同じ種ではないが、共通の祖先から進化の過程で種分化した姉妹種である可能性が高いという。また175万年前のハビリス原人の化石と比較したことから、フローレス原人は遅くとも175万年前にはハビリス原人と共通の祖先から枝分かれした、ヒト属の初期段階の系統に位置していると考えられる。
さらにフローレス原人はアフリカで進化、またはアフリカからフローレス島へ渡ってきた祖先が進化した可能性が高いと説明した。一方で、2種が共存していたかどうか、祖先が何であるのかについては不明だという。
■相反する理論
これらの結果をもとにデビー博士らの研究では、フローレス原人が発達上の障害を負った現生人類(ホモ・サピエンス)であることと、ジャワ原人から進化したという二つの説を否定した。
ジャワ原人が進化した説について最も説明がつかない点として、フローレス原人はあごの骨などがジャワ原人と比べてより原始的だったことから「仮にジャワ原人から進化したとして、退化する理由は何なのか」と疑問符を付ける。
一方、日本の国立科学博物館やオーストラリアのウーロンゴン大学、インドネシアの地質博物館などからなる共同の国際調査チームは16年、リアン・ブア洞窟から約75キロ離れたソア盆地のマタ・メンゲで14年に発掘された約70万年前の化石を研究し、初期のジャワ原人やフローレス原人と似ていたことから、フローレス原人が約70万年前にジャワ原人から小型化していた説を発表した。
国立科学博物館の人類研究部人類史研究グループ長の海部陽介さんは、デビー博士の説を否定する。解析された133カ所は、個々に互いに影響し合わずに等しく進化の情報を与えるという仮定そのものが証明されていないなど、手法に問題があると指摘する。
さらにジャワ原人とフローレス原人が関係するという主張の根拠となった、形態特徴の大多数を無視している点も挙げ「異論は歓迎するが、フローレス原人の祖先がジャワ原人とは無関係の原始的な人類であるとの主張が支持されたとは思わない」と語った。(毛利春香)
◇ フローレス原人 「ホビット」の愛称を持つホモ・フローレシエンシス(フローレス原人)は、2003年にフローレス島リアン・ブア洞窟で10万〜6万年前の地層から発見された小型のヒトの骨の化石。身長約105センチと小柄で脳の大きさは426cc。16年に、約5万4千年前に絶滅したとの新説が発表された。
ハビリス原人
ホモ・ハビリス(ハビリス原人)は東アフリカのケニアやタンザニアで化石が発見された。約200万〜140万年前までいたとされ、現在知られる中では最も初期のホモ属(ヒト属)。脳の大きさは500〜700ccで身長は高くても約130センチほどと小柄。直立二足歩行だが足に比べ腕が長く、チンパンジーのような出で立ちだったとされている。