「アニスさん おめでとう」 アホック知事、完敗認める
ジャカルタ特別州知事選で落選確実となったアホック知事(50)は、19日午後5時すぎ、中央ジャカルタのプルマンホテルで報道陣の前に現れた。「アニスさん、サンディさんおめでとう。選挙やキャンペーンのことはもう忘れよう。皆同じジャカルタの市民なのだから」と敗北を潔く認め、引き締まった表情で「残り半年間の任期を全うする」と続けた。
初のキリスト教徒かつ華人の同特別州知事として改革を進めたが、強硬な姿勢や歯に衣着せぬ発言で反感を買うことも多かった。出馬直後にはコーラン侮辱発言でイスラム勢力の標的に。起訴されながらも「実績の現職」として粘り強さを見せ、第1回投票は首位通過。だが最後はムスリムのアニス・バスウェダン候補(47)に及ばなかった。
この選挙結果を象徴した地域の一つは、アホック氏が置屋街を強制撤去して緑地化したカリジョドだった。第1回投票で同氏が得票率54%で制した地区で、撤去は住民衝突を引き起こすも、近頃は「安全になった」「見違えた」という声が聞かれていた。
ところが今回、同地区では形勢が逆転。アホック氏は得票率45%でアニス氏に敗れた。「置屋街の元ボス」といわれるダエン・アジズ氏がアニス氏を選ぶよう住民らを脅した、との情報も飛び交った。
「特定候補への投票を促す脅迫行為や不正投票あった」。アホック氏陣営は午前11時すぎから立て続けに4回、記者会見を開いて選挙不正を訴えたが、開票速報でアニス氏に10ポイント以上の大差を付けられ、午後5時すぎに完敗を認めた。
「(残りの任期で)やり尽くせないこともあるだろうが、アニス、サンディがうまく続けていってくれると思う」と敗戦の弁を述べるアホック氏。
その姿を傍らで見守ったプラスティヨ・エディ・マルスディ選対本部長(闘争民主党)は7カ月に及んだ選挙戦を「宗教冒とくとSARA(宗教、民族、人種、階層)問題の影響が大きかった」と振り返った。
アホック氏の記者会見会場では、同氏劣勢が伝えられ始めた午後2時以降も、報道陣は途絶えず、その数は勝利したアニス氏よりも多い数百人に上った。外国人記者の姿もあり、敗戦候補としては異例の注目度だった。(木村綾、写真も)