アホック氏、初公判で涙 「侮辱の意図なかった」 罪状認否で無罪主張 検察「宗教を冒とくした」

 コーランを侮辱したとして、宗教冒とくなどの罪で起訴されたアホック・ジャカルタ特別州知事(50)=知事選出馬で休職中=の初公判が13日、旧中央ジャカルタ地裁(ドウィルソ・ブディ・サンティァルト裁判長)で開かれた。アホック氏は「侮辱の意図はなかった」と述べ、涙ながらに起訴事実を否認した。

 検察は起訴状で、キリスト教徒のアホック氏が9月27日、プラウスリブ県プラムカ島の住民の前でスピーチし、コーランのアル・マーイダ章第51節に触れたことを問題視。「被告はスピーチで、何者かがアル・マーイダ章第51節を知事選で人々を惑わすために使っているとした。しかし、アル・マーイダ章第51節を選挙で人々を惑わすために使っているのは、被告自身だ」と主張した。
 当時、すでに知事候補として登録しており、被告が「地獄に落ちるのを恐れて私に投票できないというのであれば、仕方ない」などと述べたことは選挙に関連付けた発言と指摘した。
 イスラム学者会議(MUI)が10月11日、アホック氏の発言は宗教冒とくに当たり、イスラム指導者を侮辱したとする宗教見解を発表したことを受け、検察は「被告は刑法156a条(宗教冒とく)と同156条(公共の場での憎悪表現)に違反した」と主張した。

■政治家が聖典を利用

 アホック氏は罪状認否で「アル・マーイダ章第51節に解釈を加えたり、冒とくしたり、イスラム指導者を侮辱したりする意図はなかった。私の発言は、アル・マーイダ章を不適切に利用し、正々堂々と地方首長選挙を戦えない政治家たちに向けたものだった」と起訴事実を否認した。
 聖典の政治利用の例として、「神聖な章句の加護に隠れて」との副題を持つ2008年出版の自著から文章の一部を引用しながら、「キリスト教徒の政治エリートも、同じ信仰を持つ人々への善行を説く聖書の『ガラテヤ6章10節』を論拠に使う」と指摘。
 さらに「バリのヒンドゥー教徒や仏教徒がどうなのかは知らないが、同じ宗教、民族、人種、階層(SARA)の指導者を選ぶよう呼びかける点では同じことだ」と述べ、候補者が提示する公約ではなく、SARAを利用した選挙戦を展開する政治エリートを批判した。
 アホック氏はまた、故郷バンカブリトゥン州ブリトゥン島で、養子縁組の関係を持つムスリムのアンディ・バソ・アミル氏一家について語り、「イスラムを侮辱した罪に問われるのは、とても悲しい。私の最愛の両親と兄弟を侮辱したと言われるに等しいからだ」と声を震わせた。
 アンディ氏は南スラウェシ州マカッサル出身のブギス人で、ユスフ元国軍司令官の弟。アホック氏の実父と親交があり、アンディ氏の息子アナルタ・アミル氏はアホック氏の修士課程の学費を負担するなど、家族同然の付き合いがあったという。
 初公判に先立ち、報道評議会などは、宗教論争を過熱させる恐れがあるとして裁判の生中継を控えることなどを求めていたが、この日の公判は民放TVワンが代表撮影し、各局で生中継された。
 傍聴席の定員は約80人と限られたため、地裁前には入りきらない報道陣や聴衆があふれたほか、イスラム団体の数百人が横断幕を掲げ「アホックを投獄しろ」と訴えた。
 アホック氏の弁護団は総勢80人。次回公判は20日に開かれる。(木村綾)

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