ネット中傷  拘留廃止 「忘れられる権利」保証 改正情報電子商取引法施行

 サイバー犯罪や電子取引などに関する改正情報・電子商取引(ITE)法が28日に施行された。2008年制定以来、初の改正となり、ネット上の中傷による名誉棄損の容疑者拘留を廃止したほか、個人が過去の情報の削除を要請する「忘れられる権利」を保証。一方で、政府が行うウェブサイト遮断の判断基準が不明瞭だとの批判も出ている。

 同法で規制対象となるのは、ウェブサイトやソーシャルネットワーキングサービス(SNS)、メール、SMSなどの電子情報。
 改正法では刑罰の量刑を緩和した。禁錮刑を最高6年から同4年に減軽したことで、「最高5年以下の禁錮刑を科す法律の容疑者の拘留は認めない」とする刑法の規定に基づき、同法違反の容疑者の身柄は拘束されなくなった。
 罰金額も最高10億ルピアを7億5千万に引き下げた。暴力を振るうとする脅迫に対する罰則では、禁錮12年、罰金20億ルピアから同4年、同7億5千万ルピアに引き下げた。
 同法違反に問われ無罪が証明された後、過去の報道の削除を求める権利を保証すると規定。プライバシー侵害への救済措置として、欧州で盛んに議論されてきた「忘れられる権利」を盛り込んだ。
 ポルノやSARA(民族、宗教、人種、階層)、テロ、名誉毀損など、法律に反する情報を拡散した場合、政府がウェブサイトへのアクセスを遮断すると規定。名誉毀損(きそん)に該当する情報の拡散は親告罪とすることを明記した。
 また、裁判所の許可を得ずに行われた盗聴は認めないとした憲法裁判所の判決に基づき、無許可の盗聴記録を裁判の証拠物として採用できないと定めた。

■経歴抹消に悪用も
 法律擁護協会(LBH)報道部は地元メディアに対し、法改正は量刑緩和に終始し、現在直面するネット上の問題を解決する規定は盛り込まれなかったと指摘。名誉毀損は刑法と変わらず、身柄拘束を廃止したものの、同法の恣意(しい)的な運用を防ぐための規定はないと批判した。
 30日付日刊紙コンパスは「ジャーナリズムの商品は対象外にすべきだ」と訴える記事を掲載した。例として「忘れられる権利」を挙げ、政治家の経歴抹消などに悪用される可能性があると指摘。ネット上の記事については報道法やオンラインメディアの報道倫理規定などがあり、削除要請に対する判断基準は細則でさらに明確化すべきだとした。
 情報・電子商取引法は、フェイスブックなどのSNSがインドネシアで人気を集め始めた08年に制定された。同年にはポルノ規制法も施行されている。インドネシアでは実名でSNSに登録するケースが多く、ネットで拡散される情報の発信者の身元も特定しやすく、新たな社会問題を引き起こした。
 09年には、誤診を受けたと主張する病院批判のメールを友人らに送った主婦プリタ・ムルヤサリさんが病院側に名誉毀損で訴えられ、同法を適用し身柄拘束された初の事件として注目を集めた。プリタさんは支援運動などを経て保釈された後、最高裁上告審で12年、民事・刑事裁判ともに逆転無罪が下った。(配島克彦)

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